「他のドラマとの日程調整ができないと最初は断ったのですが、脚本家とプロデューサーがどうしてもと言ってすり合わせてくれました。躁鬱(そううつ)病を患って感情の起伏の激しかった田宮さんとぶつかることもあった。早く彼の病気を知ってアドバイスできていたらと思うこともありました。あのドラマでは先日亡くなった島田陽子さん(東佐枝子役)とラブシーンも。彼女は身長がぼくより少し高かった。抱き合う時の撮影では、ぼくは小さな木箱に乗ってました。屈辱のラブシーンでした(笑)」
出演したテレビドラマは「下町ロケット」(2018年版)など数百本、舞台では「放浪記」だけで1300回も演じている。
學さんは俳優座同期生と結婚したが離婚、その後一般女性と結婚した。しかし、その女性とは2007年に死別。子どもはない。一人暮らしが長くなった。
「妻は広島の原爆被爆者でした。肺がんの治療から8年後に今度は頭に腫瘍ができた。最後は自宅で亡くなりました。家の中のことは妻に任せっきりでしたので、はじめはどこに何があるのかもわからず大変でした。でも、料理も自分でするようになってなんとか暮らしています」
學さんはポジティブだ。筆者ぬきでもデイケアに通うようになった。週に3回も。
■筋トレの効果か記憶テスト満点
「授業(メニュー)をひと通りやってから通い方を決めようと思って」
心配した本山トレーナーから連絡が入った。
「學さんは今日も参加されました。まだ体力回復が万全でないのに85歳できついトレーニングを週に3回はやりすぎ。朋さんから學さんにひとこと言ってください」
でもその言葉の後で、本山さんは嬉しそうにこうつけ加えた。
「學さんはすごいですよ。昨日トレーニングの後で残ってもらって、認知症テストで有名なファイブコグテストをやってもらったら32点満点でした。本山式筋トレを集中的にやった効果ですよ。過去に筑波大学の大学院生でもそんな点数は取れていません」