ただ、教科書に載ったからには先生がスルーするわけにはいかないだろう(と、この時点では考えていた)。家庭科の先生に話を聞くため高校に取材を申し込んだが、次々に断られた。

「準備が整っていない」「検討中」「家庭科自体がない」など理由はさまざまだった。

 快諾してくれたのが、品川女子学院高等部。都心の一等地にある1925年設立の私立伝統校で、以前から金融の独自授業をしていた。家庭科教諭の丸山智子さんは着任7年目。マネー関連の勉強を始めたら「思った以上に大変だった」と振り返る。ネットで検索し、金融に詳しい知人から教わるなどして「生徒に教えられるレベルになるまで長時間、調べました」。

期末テストで金融問題

 品川女子学院は金融教育事業を手がける民間企業、ファイナンシャルアカデミーにも協力を仰ぎ、家庭科の授業を展開している。「生徒は1人1台iPadを持っているので、ウェブサイトで調べものをしたり、調べたことをまとめてレポートを作成したりすることも可能です」。教科書の資産形成の記述が少なくても支障はない。

 期末テストなどでは、どんな問題を出すのだろう。丸山さんは来年3月の学年末試験について、クレジットカードを含めた「金融」の分野からも出題する予定であると話す。

「教科書に記載されているような金融商品の基礎知識だけではなく、ファイナンシャルアカデミーの方による特別授業で扱う予定の住宅ローンについても、試験範囲に含む予定です」

 作問からチェックまで、試験問題の用意には5~6時間かかる。日々の授業やオリジナル教材の準備もあり、負担は重い。

(ジャーナリスト・大場宏明/編集部・中島晶子)

AERA 2022年9月5日号より抜粋

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