「最近、妻が触らせてもくれないんだよね」。そう嘆いているアナタ、なぜだかわかっていますか? 「女性は閉経すると性欲がないからでしょ」。違う。夫との関係がよければ、性行為はなくても触れ合うことは妻も望んでいる。人肌は心地良く、癒やされ落ち着く。それでも触れられたくないのは……。フリーライターの亀山早苗さんが調べた。
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「2年がかりでセックスが復活しました!」
満面の笑みを浮かべてそう言うのはタカシさん(56歳・仮名=以下同)だ。結婚して27年、40代後半からセックスレスだった。だが50代に入り、下の子が巣立ってふたり暮らしになったのを機に、夫婦関係を立て直したいと切実に感じたという。
「妻は『もう更年期だから体がついていかない』って。でも残りの人生を考えると、ふたりきりになった今こそ、もう一度恋人時代を過ごしたいと僕は思った。何度も誘ったら、妻はニヤリとして『じゃあ、挿入なしで感じさせて』と。チャレンジでしたね。ただ、がんばっても妻の反応は薄かった。僕の愛撫が下手だからだそうです」
そこが問題なの、わかった? 妻のその言葉に彼は目からうろこが落ちた。夫婦仲に問題があるとは思っていなかったが、セックスのみならず、日常生活においても妻からの信頼度が非常に低いとわかったのだ。
「子育て中に僕に思いやりがなかったとかひどいことを言われたとか、昔のこともさんざん出てきた。『セックスだってずっと自己中だった。痛いと言っても無視された』と。自分は大事にされていないと痛感したそうです。男は射精することしか考えていないと非難されました」
タカシさんは妻に聞きながら、どこをどうしたら妻が感じるのか、とにかく丁寧に愛撫するようになった。
妻がセックスを拒否する。それはもしかしたら、夫のすべてがイヤになりかけている兆候かもしれない。
「ジャパン・セックスサーベイ2020」(避妊具や育児用品などを製造するジェクスの依頼で、一般社団法人日本家族計画協会が、全国20~69歳の男女約5千人に実施した調査)によれば、「セックスしたいか」という問いに、50~60代の男性の7、8割がイエスと答えているのに対し、女性は2、3割しかイエスと答えていない。アバウトな言い方だが「したい男としたくない女」は年齢を経るにつれ顕著になるのだ。