球団初のカナダ出身選手は、10年間マイナーひと筋とあって、成田空港に出迎えに行った球団関係者も本人を確認する手掛かりは顔写真だけという心もとなさ。

 さらに間の悪いことに、エアカナダ機で定刻に到着したベッツが、入国審査の混雑により、ゲート通過が遅れたことも、混乱に拍車をかけた。

 なかなか姿を現さないベッツに、球団関係者や報道陣が気を揉んでいると、到着ゲートに一人の大柄な白人男性が現れた。キョロキョロと辺りを見回し、明らかに迎えを待っている様子。球団関係者が近寄り、「もしかしてトッド?」と尋ねると、男性は「イエス」と答え、握手を交わしたばかりでなく、ヤクルトの帽子をかぶり、球団マスコットのつば九郎に頬ずりまでして見せた。その様子を見た報道陣も慌てて駆け寄り、一斉にカメラのフラッシュを浴びせた。

 だが、丸顔のコメディアン風の風貌に加え、推定100キロはあろうかという巨体。やはりおかしい。そこで、「本当にトッドか?」と再確認すると、男性は「ノー、オレはジョンだ」。カバンにもしっかり「ジョン」の名札がかかっていた……。とんだニセモノ騒動に、興味津々で一部始終を見ていた一般客たちも大爆笑だった。

 一方、遅れてゲートを出てきた本物のベッツは、なんと、近くで騒動を眺めていた。

「他のチームの外国人が先に来ているのかと思った。でも、よく見たら、ヤクルトと同じ帽子をかぶっていて、変だなって思ったよ」。

 来日早々、別人に主役の座を奪われた新助っ人は同年、打率.287、15本塁打、52打点とまずまずの成績を残したが、“ポスト・ペタジーニ”として物足りなく映ったのか、1年限りで退団となった。

 到着便に乗っていなかったことが判明し、「消息不明」と報じられたのが、12年にソフトバンク入りしたウィリー・モー・ペーニャだ。

 レッズ時代に“サミー・ソーサ2世”の異名をとった通算84本塁打の長距離砲は、松田宣浩が「飛ばす人の打撃練習を見てみたい。バリバリのメジャーでしょ?自分も飛距離にはこだわってますし、話したい」と目を輝かせるなど、合流前からナインの間でも話題を集めていた。

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来るはずの助っ人が飛行機に乗っていない?