「結果が出るまでは自宅待機になるので、そのスタッフの分の仕事を埋める必要も出てきます。そもそも人員不足の現場なので働けない申し訳なさはありますが、もし家族が陽性だった場合はそのスタッフも濃厚接触者になってしまう」(男性)
高齢者と接する介護職だから特に、感染者が出ないように対策を徹底する。デルタ株が流行した第5波までと違い、第6波ではスタッフが検査を受ける頻度も上がっているという。
■入所施設7割人手不足
宮城県内で約50の高齢者施設を運営する医療福祉グループ「清山会」では、陽性となった利用者を担当する職員を決めるために「レッドゾーン除外配慮基準」を設定している。行政の指針にある妊婦や基礎疾患のある人に加え、基礎疾患をもつ家族がいる人、75歳以上の高齢者と同居する人、未就学児を養育している人、一人親で18歳以下の子どもを育てている人、55歳以上の人、業務経験が1年未満の人など7項目いずれかに当てはまる人が除外対象になる。
20年5月には、無記名アンケートを実施。ケア担当職員719人中、配慮基準すべてに該当しない職員は263人だった。代表の山崎英樹さんはこう振り返る。
「そのうち、75%の職員がレッドゾーンの担当要請に応じると回答しました。日本社会が不安に覆われていた時期だったので、胸が打たれました」
その後、感染症の専門家などとともにゾーニングやマニュアルを作成。入居者も交えた訓練も繰り返した。
山崎さんが実施した調査では、陽性者が発生した入所系施設の7割が深刻な人員不足に陥っていることがわかったという。陽性者や濃厚接触者が出たときに備え、法人の枠を超えた応援体制が必要だと考えている。
「施設ごとに対応策がバラバラでは、派遣した職員を守ることができません。発生に備えた実践的研修や新型コロナ対応で悩んだときに相談できる窓口の設置などが必要です」(山崎さん)
(編集部・福井しほ)
※AERA 2022年2月7日号より抜粋