AERA 2022年2月7日号より
AERA 2022年2月7日号より

「入れないと決めたのは、世界選手権に出発する3日前です。かなり死ぬ気でやって、アクセルだけ2時間ぶっつづけという練習もありました。あと8分の1回ればランディングできます。ただ、かなり身体を酷使して痛む部分がでてきています」

 4月の国別対抗戦では練習で4回転アクセルに挑戦。4回転と4分の1ほど回り、転倒した。

「最初から浮かず、自分にとってはかなり感触の悪い4回転でした。やはり、高さと回ることの両立がかなり難しいジャンプです。跳べている夢は3回くらい見ました。すごく生々しく。がむしゃらさも備えつつ、冷静に分析もしながら、自分の限界に挑み続けたいと思います」

 そして迎えた今季。羽生は、またアプローチを変えた。今度は体重を3キロ減らしたのだ。そして全日本選手権の練習で見せたのは「回転軸を作る」という動作の繰り返しだった。

 トリプルアクセルを跳び、その直後に3回転ループを跳ぶ。または、トリプルアクセルの着氷後にツイズルという回転動作をする。これはすべて、着氷で回転軸を右側に残しておき、右足での着氷につなげる基礎練習だった。

 羽生はこう説明した。

「自分のなかでは、軸作りが一番大事だと思っています。今日は軸がうまくいったパターン。もう一つは回転を11割の力で回して、ぎりぎり4分の1足りないくらいで転ぶというもの。今の段階では、その二つを両立したものは難しいです」

■無限の力が支えるよう

 本番は、やはりスピードを落とし、慎重に4回転アクセルを踏み切る。4回転まわったところで両足着氷すると、回転軸を右にキープしているため転倒せず、右足での着氷姿勢へとつなげた。真骨頂はこの後。残る4回転3本を含むプログラムをパーフェクトに滑り切る。冒頭で4回転アクセルに挑んだ疲れなど感じさせず、呼吸の乱れも少ない。無限の力が羽生を支えているかのような、“4回転アクセルの初演”だった。

「まあ頑張ったなという感じです。(回転の軸を取ることが)できるようになったのはここ2週間くらい。軸を作りきれる自信が出来てから、100%の力で回り切るということをやっていかないとダメなので。試合であれだけ出来たら、妥協できるところ。悔しいですけれどね」

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