日本は海外の冬季五輪史上最多の124人の選手を送る。中でも注目すべきはフィギュアスケート男子シングルの羽生結弦選手。五輪3連覇と史上初の4回転アクセル成功をめざす。AERA 2022年2月7日号は「北京五輪」特集。
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羽生結弦(27)が五輪3連覇を宣言した。しかも史上初となる4回転アクセルを携えて。
「五輪代表のジャージーに腕を通した時に『ああこれが五輪だな』って。3連覇を決意したのはその時です。すでに2連覇も持っていて、(タイトルを)失うことは怖いんですよ。今のところは負ける確率は平昌五輪より高いです。ただユニホームを着た時に『これは勝ちにいかないといけないんだな』と思わせていただきました」
彼の目は、一体どんな形の勝利を見据えているのか。そして羽生に挑む武者たちは、どんな戦いを模索しているのか。
彼にとって3度目の五輪。「何が何でも勝つ」と燃えていた2大会とは異なり、「夢をかなえるために勝つ」という。
■3連覇の権利は僕だけ
19歳で臨んだソチ五輪は、パトリック・チャン(カナダ、当時23)が優勝候補として君臨していた。羽生はシーズン前半を通して急成長し、チャンを追い越した。当時の羽生は「演技構成点では追いつけないので、僕はジャンプ。2種類の4回転を入れる選手は少ないので、そこは僕の強みにしたい」と語っていた。若く、がむしゃらに、勝利だけを目指してジャンプを跳びにいく選手だった。
平昌五輪は、世界最高得点保持者でありながらもシーズン中にけがをして迎えた。すでに4回転ループもルッツも成功していたが、23歳の身体と対話し、五輪は2種類の4回転で戦った。
「ジャンプだけでなく、プログラムをトータルパッケージとして見せることが大切」という信念のもと、自身の世界に引き込む演技を貫く。演技を終えた瞬間には「(自分自身に)勝ったと思った」という大会だった。
3度目は何を思い描くのか。