「言ってもいいんですが……、そうすると、大人が考えている枠のなかのことしかできなくなる。子どもは大人が思っている以上に柔軟な考え方をもっている。子どもを観察し、その子が興味をもっていることに寄り添って、その関心を拡げてあげられるような働きかけを親はしてあげてほしいです」
そうやって子どもたちが発見したことを、うまくアウトプットできるようにしてあげることも大切だ。
「テストでもただ点数についてあれこれ言うのではなく、『どこをどうやったらうまくいったと思う?』と問いかけて、自分の理解していたことや理解できていなかったことを、算数の言葉で言語化できるようにしてあげてほしいです」
日本の算数・数学教育では「『理解がゆっくりな子』が置いていかれていることが、一番気になります」と横山さんは言う。
「学ぶペースを考えたときに、慎重な子は授業のスピードに置いていかれてしまう。それで、算数や数学が苦手になり、嫌いになってしまいます。授業を聞いてから、考えて自分の中に落とし込む時間がかかる子は、理解できるまでにサポートや反復が必要だから、授業だけだと理解に至らないのです」
算数や数学への向き合い方は本来人それぞれのはずだ、と横山さんは言う。
「算数をつかって考えたり、遊んだり、何かを発見したり。算数や数学に対する向き合い方は人それぞれ、たくさんあります。そこから算数や数学への興味が育ち、好きになっていく。どれがその子にぴったりな向き合い方かはわからないから、親はできるだけ、勉強以外でのたくさんの向き合い方を、親自身も楽しみながら提示してあげてほしいんです。算数が苦手でも、大人なら楽しむことはできるはずです」
算数で「遊ぶ」題材のひとつとして横山さんがすすめるのが、「フェルミ推定」だ。フェルミ推定とは、たとえばこんな問題に使われる。
「給食に出てくるスパゲティー、全校生徒分つなげたら何メートルになる?」
「私たち何人が手をつないだら、地球をぐるっと1周できる?」