プーチン氏はコミ共和国、マガダン州、スベルドロフスク州、モスクワ州の代表と、実は同じ日に会っていた。何日かはわからないが、17日以前だったのだろう。それを17日、18日、23日、24日の4日にばらして発表したのだ。4枚の写真でプーチン氏は違う柄のネクタイをしているが、これはおそらく面会のたびに取り換えていたのだ。
22日の写真だけは、別の日に撮影されたものだろう。そう考えないと、この一枚だけ細部が違う理由の説明がつかない。
実は、プーチン氏がクレムリンで集中的にこなした公務を、大統領府がいくつかの日付にばらして発表しているらしいことは、モスクワの外交関係者の間では以前から知られていた。
日本の首相の場合、新聞・テレビ・通信社の担当記者が朝から晩まで張り付いてその動向を追っているから、こんなことはできない。しかし、ロシア大統領の場合、メディアの記者が立ち会わない行事が数多くある。知事や国営企業トップらとの面会はその典型だ。本当はいつ会っていたのかは、本人とその周辺以外に知る術は無い。
なぜロシアの大統領府はこうした情報操作をしているのだろうか。その理由は分からない。ただ、細心の注意を払わないと足をすくわれる取材対象だということだけは間違いないだろう。
(朝日新聞論説委員・元モスクワ支局長 駒木明義)