以前にも紹介したのですが、白隠さんが82歳で亡くなる1カ月前のことです。近隣の諸寺に数日間にわたり説法に出かけ、大変お疲れの様子。同行の僧が、どうかお休みくださいと頼んでも、まだまだ、と受け入れません。そこでその僧は一人のふくよかな女性を呼び、こちらと同衾してお休みくださいと進言しました。すると白隠さん、今度は快諾し彼女に抱かれて、大いびきをかいて休み、その後の説法をつとめたというのです。

 私は白隠さんのこの人間味あふれる話が大好きで、私もいつかそんな女性と同衾して大いびきをかきたいと思うようになりました。

 そして、そんな女性に出会ったのです。講演会の最前列中央に彼女はいました。ふくよかです。私は講演のなかで白隠さんの逸話を自然に披露することにしました。講演が終わって彼女と話すことができたので、思い切って言いました。「白隠さんの逸話の役をあなたにしてもらいたい」。すると「いいですよぉ」と返事が来たのです。

 女性の好みについては、変わったというより、幅が広がったのですね。そのお陰でいいことが起こるものです。私は死ぬまで女性の幅を広げつつ、女好きを続けたいと思っています(笑)。

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

週刊朝日  2022年4月22日号

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