ある晩、寝ていると、とても久しぶりに私の顔を、前脚で“ちょんちょん”としました。それがボクから私への「最後のあいさつ」となりました。
そしてその日(12月6日)の明け方、何となく電気をつけて、のどが渇いているかと綿棒を水で浸して口元をぬらしてたら、ふーっと3回息をして、そのまま布団の中で息を引き取ったのです。庭を見ると、紅葉で木々が真っ赤に美しく染まっていました。
■また会える日まで
あれから、約5カ月経ちます。
遊んだこと、散歩したこと、いろんなシーンがフラッシュバックするけれど、やはり最後の3カ月が胸に残っています。
私はボクのために犬用スリングを買い、(首にかけたまま)自転車のカゴにいれて、ルンルンとペダルをこいでいました。治るわけでもない通院ですが、苦しいながらも楽しかった。ボクも前カゴに座って周りを見回しながら、同じ気持ちだったように思うんです。
本当は、ボクは「主人と一緒に」逝こうとしたのかもしれない。でも思い直して、少しだけ私に「寄り添い、生きる」ことを決めた気がしてなりません。ボクの介護は生きがいだったし、その間は主人を失った寂しさがまぎれていたのだから、感謝でいっぱいです。
旅立って100日目。ボクが亡くなった朝6時半に、部屋の前の築山(ラッキとタロもいる)に納骨しました。今はミニ骨つぼに、主人とボクの骨が一片ずつ、納めてあります。
ボクがいない生活に、正直まだ慣れません。今も部屋に黒い物があると、私は「あっ、ボクだ」と思い、たまに「ニャー」という声が聞こえる気もします。
同居する次男が、「そんなに悲しいならまた猫を迎えれば」と言ってくれることもありますが、自分の年齢的に最後までみるのは難しい。獣医師の先生は「保護活動のボランティアをすれば」とおっしゃいましたが、そのような気にもまだなれず。
でも、不思議ですね。こうして伝えることで、少しだけ気持ちが楽になるんです。思い出話は尽きないし、後から後から思いがあふれるのだけれど……。
大好きなボク。ボクと会って家の子にしてくれた主人と、先輩猫タロ、先輩犬ラッキと「空」で仲良く過ごしてほしいな。いつか会えるその日まで、待っていてね。心から、ありがとう。
(水野マルコ)
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「猫をたずねて三千里」は猫好きの読者とともに作り上げる連載です。編集部と一緒にあなたの飼い猫のストーリーを紡ぎませんか? 2匹の猫のお母さんでもある、ペット取材歴25年の水野マルコ記者が飼い主さんから話を聞いて、飼い主さんの目線で、猫との出会いから今までの物語をつづります。虹の橋を渡った子のお話も大歓迎です。ぜひ、あなたと猫の物語を教えてください。記事中、飼い主さんの名前は仮名でもOKです。飼い猫の簡単な紹介、お住まいの地域(都道府県)とともにこちらにご連絡ください。nekosanzenri@asahi.com