飼い主さんの目線で猫のストーリーを紡ぐ連載「猫をたずねて三千里」。今回は、千葉県在住の冨田敏子さん(76)が可愛がっていた雄の黒猫のお話です。昨年9月に敏子さんは夫を亡くしたのですが、その翌日、17歳の猫が立てなくなりました。夫に続いて猫まで?まだ一緒にいたい一心で、敏子さんは動物病院に通いました。その思いに応えるように猫も一日一日、生きたそうです。一緒に過ごした時間を振り返ってもらいました。
* * *
猫の名前はボクといいます。
ボクは残念ながらもうこの世にいませんが、この「猫と飼い主の募集」コーナーを見つけ、(亡くなった子でもいいというので)思わず応募しました。ボクの姿が次々心に浮かんで、誰かに伝えたくなって。だからちょっとだけ、ボクのことを聞いてください。
黒猫のボクが我が家にやってきたのは、2004年8月14日でした。明け方に、主人が普段は行かない近くのコンビニに行くと、駐車場で湘南ナンバーの車の若者2人から、缶詰と一緒に「おじさん、この子もらってくれ」と頼まれたんです。
家には猫のタロ(当時15)と犬のラッキ(当時14)がいたので、飼ってくれる方を探したのだけど見つからず、家に迎えました。タロとラッキはすぐに受け入れました。
夫は、出会いにちなんで名前を「湘南ボーイ」にしようかと言ったのですが、なんとなく、ボクちゃんという雰囲気だったので私が名前を決めました。
■子どもたちより濃い時間を過ごして
ボクが来た時、私も仕事を辞めていたので、おつかいにいく以外はボクとずっと一緒。長男はすでに家を出ていたし、長女もボクが5歳の時に結婚したので、子どもが成長した後に、私と“濃い時間”を過ごしたのです。
ボクは遊ぶのが大好きで、私が疑似餌を投げると走っていってくわえて持ってきました。トイレの後に興奮して走り、私が追うと、まるで面白がるようにまた走ったりして。