秀島史香さん(写真:著者提供)
秀島史香さん(写真:著者提供)
この記事の写真をすべて見る

 なぜラジオは3時間の生放送でも聞き続けられるのか? ラジオDJとして25年、第一線で活躍し続ける秀島史香さんですが、実は「もともと緊張しがちで人見知りで心配性」といいます。そんな秀島さんだからこそ見つけられた、誰でも再現できる「人が聞き入ってしまう会話のレシピ」を一冊に詰め込んだ『なぜか聴きたくなる人の話し方』からの連載。今回は、会話のアクセントになるオリジナルフレーズの作り方をご紹介します。

*  *  *
■フックになる言葉は身の回りに落ちている

 私たちが朝起きてから夜寝るまで、世界は「これはおもしろい!」と感じる魅力的な表現であふれています。ニュースや新聞、本や雑誌のタイトルや見出し、街で見かけるポスターまで、人の耳目を集めるため練られた言葉は、心にフックのように引っかかるもの。

 このような刺激を受けながら私が作っているのが、オリジナルの「新語」です。ラジオのフリートークにうまく入れ込められれば、「なになに?」「どういうこと?」とリスナーの興味を惹くきっかけになりますし、相手の頭の中でイメージしてもらう材料にもなります。

 ただ、新語といっても、イチから新しい言葉を生み出すわけではありません。

 例えば、今部屋を見渡してみたら、ふと目に留まり、思わず二度見したのが、娘が借りてきた児童書の表紙。『ブラックホールの飼い方』(ミシェル・クエヴァス著、杉田七重訳、小学館)。パラパラと開いてみると、主人公はステラという11歳の女の子。自分のあとをつけてきたブラックホールをペットにしてしまうというお話です。

 描かれているのは、自身の心とどう向き合っていくかというメッセージなのですが、なんともユニークな例えに、なるほどと感心しました。自分のブラックホールを「飼う」という発想。日本語でも「孤独を飼い慣らす」という表現は目にしますが、ペットとして「飼う」という発想は新鮮!

 ここから着想を得て、例えば他にも目に見えないものを飼えないかな?と連想してみる。何か他の言葉にスライドさせて使えないだろうか。例えば、「自意識の上手な飼い方」とか、「プレッシャーの飼い方」とか、「自分時間の飼い方」と、頭の中で穴埋めクイズのように遊びながらメモしておきます。

 今や世の中に定着している「婚活」という言葉も、もともとは就活(就職活動)をアレンジしてできた言葉ですよね。その他にも、終活やら、妊活、朝活、腸活など、新しい「○活」が次々と生まれています。

著者プロフィールを見る
秀島史香

秀島史香

秀島史香(ひでしま・ふみか)ラジオDJ、ナレーター。1975年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。慶應義塾大学在学中にラジオDJデビュー。映画、テレビ、CM、美術館音声ガイドなど多岐にわたり活動している。現在FMヨコハマ『SHONAN by the Sea』、NHKラジオ『ニュースで学ぶ「現代英語」』、NHK Eテレ『高校講座 現代の国語』などに出演中。著書に『いい空気を一瞬でつくる 誰とでも会話がはずむ42の法則』『なぜか聴きたくなる人の話し方』(共に朝日新聞出版)。ハスキーで都会的な声質、あたたかい人柄とフリートークが、クリエイターからリスナーまで幅広く人気。

秀島史香の記事一覧はこちら
次のページ
例えば「リアル二刀流」と「愛の不時着」を使った新語は…