コロナ禍は2年を超え、苦境が続く航空大手。大幅減収に見舞われたCA(キャビンアテンダント)が出向先の企業で活躍していると報じられる美談の裏で、生活のためのアルバイトにすら不合格となるほど悲惨な例もある。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
各地の名物の調理動画をアップするCA
出向先で大歓迎の“美談”は全員共通なのか?
北海道名物のおやつの「いももち」、北九州市の「焼きカレー」、熊本県の「だご汁」――。日本航空(JAL)は、航空機の客室乗務員(CA)を「JALふるさと応援隊」に起用。各地の名物料理を現役CAがエプロン姿で、「それでは早速作っていきましょー」などと楽しげに調理する動画をYouTubeで配信している。料理だけでなく、富山県の「越中和紙」でマスクケースを作る動画もある。
全日本空輸(ANA)でも、CAが地域貢献を目的として山形県酒田市に移住し、地元の観光PRや酒蔵との商品の共同開発に取り組んでいる。CAがバラエティー番組に出演して地元の飲食店を紹介したこともある。
「JALふるさとプロジェクト」のホームページにはこれらの活動について、「ふるさとへの想いを大切に地域とのつながりを育み 新たな価値創造に努めるとともに 持続可能な地域社会の実現とSDGsの達成に向けて活動してまいります」などと書かれている。
新型コロナウイルスの感染拡大で航空便が激減。基本給が少なく、収入の多くがフライト数に比例するCAが苦境にあると伝えられてきた。実際、こうした地域おこしの一環で地方自治体に出向し、収入を得るケースもある。
コロナ初期にはCAの出向先として、コールセンターや高級食品スーパー、家電量販店などが積極的に引き受けを表明。旅客機の保安要員として厳しい教育を受けている上に接客スキルが高いため、大歓迎されているとの報道もある。
会社側はもちろんCAの雇用確保に奔走してきたわけだが、それでもCAからは、年収がコロナ前には到底及ばないとの声が上がる。さらには会社側が、グループのLCC(格安航空会社)へ転籍を勧めていることも分かった。
メディアで喧伝される美談の裏側で進む、CAが直面する苦境にスポットを当てる。