鈴ノ木の製麺機。モチモチの自家製麺が自慢だ(筆者撮影)
鈴ノ木の製麺機。モチモチの自家製麺が自慢だ(筆者撮影)

「六厘舎」では東京ソラマチ店(東京都墨田区)で働いた。そのうち2年間は店長に抜擢(ばってき)された。店舗展開がスタートし、会社が変わっていく時期で、40~50人の従業員のマネジメントをやるという役割だった。ラーメン作りというよりは、店作りをしっかり学べた時期だった。その頃、瀬戸口さんが先に独立し、「つけめん さなだ」を埼玉県の三郷でオープンした。この瀬戸口さんの独立が、鈴木さんの独立を考えるきっかけになった。

「会社の中でのステップアップもあり得ましたが、多忙なのと精神的にもつらいかなと思いました。店長として1店舗を見るだけでも大変なのに、多店舗は難しいだろうと判断したんです。自分は経営者ではなくラーメン職人になろうと決意しましたが、独立するにはラーメン作りを知らなさ過ぎたことに気づきました」(鈴木さん)

 そこで、独立するにはどうしたらいいかを東京・東小金井のラーメン店「くじら食堂」の店主・下村浩介さんに相談した。もともと多加水でピロピロとした手打ち麺が好きで、「くじら食堂」の常連になって顔を覚えてもらっていた鈴木さん。下村さんに紹介してもらった店で修業することになる。

「器、醤油、地鶏など使うものはもちろん、1日のムダのない使い方など、今やっていることの9割はここで教わったことです」(鈴木さん)

「鈴ノ木」店主の鈴木一成さん。27歳の頃に「六厘舎」に飛び込んだ(筆者撮影)
「鈴ノ木」店主の鈴木一成さん。27歳の頃に「六厘舎」に飛び込んだ(筆者撮影)

 この修業に合わせて、東京都葛飾区の「金町製麺」でもバイトという形で製麺などを教わった。鈴木さんは独立に向けて、大好きな“多加水の手打ち麺”を極めたかったのだ。幼い頃から好きだった佐野や喜多方のラーメンの麺を職人になっても追い求めた。

 この頃は、結婚して埼玉県吉川市に住んでいた。独立に向けて開業資金を貯めていて、いよいよ独立をと考えた時に、所沢市にある西武ドーム(現・ベルーナドーム)の近くに店を出す案が浮かび上がる。夫婦そろっての西武ライオンズファンだからだ。

西武ライオンズの大ファンだという鈴木さん。店内にもその思いがあふれている(筆者撮影)
西武ライオンズの大ファンだという鈴木さん。店内にもその思いがあふれている(筆者撮影)

「静かな場所でゆったりとラーメンを作りたいという思いがあり、そうなると西武ドームの近くはいいのではないかという話になったんです。妻も09年からの西武ファンだったので。もしかしたら選手が食べに来てくれるかもという淡い期待をしながら、16年に小手指に引っ越し、狭山ヶ丘駅前に店をオープンしました」(鈴木さん)

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地域に根付く理想のお店