
こうして18年10月、「鈴ノ木」はオープンした。年内はオープン景気で繁盛したが、年明けから3月までは客足が悪く不安な日々が続いた。だが、鈴木さんは限定メニューには逃げず、グランドメニューをひたすら磨き続けた。すると徐々に評判が広がり、口コミサイトでも高得点が付くようになった。そして、秋の「TRYラーメン大賞」や「ラーメンWALKER」での受賞がきっかけとなり、大人気店の仲間入りとなった。今やエリアを代表する名店として、多くのファンが訪れている。
「カネキッチンヌードル」の金田店主は、鈴木さんのラーメンを高く評価する。
「『六厘舎』時代に最後の2年間を一緒に過ごしました。温厚で優しい性格で、どんなラーメンで独立するのかずっと楽しみにしていました。自宅で試作していた時代から食べさせてもらいましたが、最初からかなり完成度が高かったですね。うどん屋でも小麦の使い方を学んだそうで、いい麺を作っていると思います。地域に根付く理想のお店ですね」(金田さん)

鈴木さんも金田さんのセンスには驚くばかりだ。
「『六厘舎』の先輩ということで、いろいろと教えていただいています。修行先と真逆のラーメンを作って、さらに高く評価されるというのは本当にすごいことだと思います。センスがとにかく抜群で、うまいものを作らせたらその腕はピカイチです」(鈴木さん)

同じ「六厘舎」出身でも、これほどまでに違うラーメンで人気を勝ち得ているのはすごい。別のラーメンを作っていても、大事にしている部分は同じなのだと思う。(ラーメンライター・井手隊長)