セコマグループの丸谷智保会長。同社が災害対策に注力し始めたのは、2004年台風がきっかけだったという(photo 編集部・川口穣)
セコマグループの丸谷智保会長。同社が災害対策に注力し始めたのは、2004年台風がきっかけだったという(photo 編集部・川口穣)

 ただ、本当の困難はここからだった。発災当日は店にモノはある。しかし、商品を供給できなければ、営業を継続できない。

「飲み物もカップ麺も、メーカーの倉庫から出庫できない。急遽、関東からフェリーを出してもらって調達しました。ガソリンは優先給油証明書をすぐに要請。店舗から発注も受けられないから、企画部門がフル稼働で見積もって、プッシュ型で店に送り込みました」(丸谷会長)

 物流の継続には、東日本大震災の経験が生きた。震災では、茨城県で展開する八十数店舗が被災。主要航路である大洗港が使えず、東北自動車道も寸断されるなかで物資を送った。

■企業や自治体と連携

 一方で、課題もある。18年当時、キャッシュレス決済は既にかなり一般的だったが、通信が途絶して使えなかった。その後、全店にモバイルルーターを導入したほか、22年にはNTTドコモ北海道支社と災害協定を結んだ。発災時、店舗敷地を移動基地局車の設置スペースとして提供、通信をキャッシュレス端末の利用に生かすほか、必要に応じて被災者に充電サービスなどを提供するという。

 セイコーマートが次の災害に向け注力するのが、こうした他企業や自治体との連携だ。協定を結んだ企業・自治体は57件。建機レンタルの大手から発電機や仮設テントなど、北海道ガスから発電機用のガスなどの提供を受けられる。自治体との協定では避難所情報などの提供を受け、物資支援を迅速化する。

「災害時も安全を確保したうえで事業を継続するのは社会的な使命です。すべてを自社で投資できなくても、得意な企業と協力し、乗り切っていきます」(同)

(編集部・川口穣)

AERA 2022年7月18-25日合併号

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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