(週刊朝日2021年9月10日号より)
(週刊朝日2021年9月10日号より)

 1日1人あたりのごみ排出量も調べた。少ない順で上位6位までは福島県の原発被災地が占める。もともとの住民が離れるなどし、原発事故の影響がいまだ残っていることをうかがわせる。

 7位の長野県南牧村は「生ごみは可燃ごみとしては出さず、家庭で処理してもらう」(村担当者)。畑で肥料にするか、補助金を出して生ごみ処理機を買ってもらい、乾燥させて燃えるごみにしてもらっている。水分を抜けば可燃ごみは軽くなる。隣の同県川上村も8位で、「南牧村とまったく同じ対応」(村担当者)だという。

 生ごみを畑で肥料にするか、生ごみ処理機で乾燥させるかといった取り組みは「畑が多い長野県ではかなり多くの自治体が実践している」(同)ようで、長野県勢が多くランクインした。

 一方、18年度のデータをもとにした世帯あたりの清掃費や衛生費もある。

 清掃費は一般廃棄物、ごみ、し尿などの収集処理にかかる経費。衛生費はごみ処理などの委託に関する経費などの物件費、清掃関係や公衆衛生にかかわる職員らの人件費、ごみ処理施設建設の経費などを指す。

 世帯あたり清掃費は、1位が東京都利島村の210.3万円。離島で人口も少なく、「可燃ごみの処理に重油を持ってくる必要があり、処理規模も小さい」(村担当者)ことが要因とみられる。

 2位は福岡県大任町で135.1万円となった。大任町では、し尿・ごみ処理施設が老朽化したため、周辺の自治体で広域処理施設を新設。「し尿処理施設は21年4月から稼働し、ごみ処理施設は24年度に完成予定」(町担当者)という。

 3位が沖縄県渡名喜村で86 .1万円。上位は離島や不便な地域にある小規模な自治体が多い。

 山梨県山中湖村が15 .4万円で43位、天橋立がある京都府宮津市が14万円で56位、神奈川県箱根町が12 .2万円で79位となるなど、観光地やリゾート地がランクインした。

 また、世帯あたり衛生費も、清掃費と同様の傾向がみられた。

 1位はまさに東京都利島村で258.5万円、2位は宮城県女川町の154.2万円、3位は福岡県大任町の137.3万円などだった。女川町は「東日本大震災時の津波の被災に伴い、新たな団地造成の水道事業関連の費用を計上した」(町担当者)のが要因だ。

 ごみ問題は将来の暮らしに大きな影響を与えるだけに、地域の取り組みには注目したい。(本誌・池田正史、浅井秀樹)

>>【関連記事/CO2排出量が少ない市町村ランキング 意外、東京・小金井3位】はこちら

週刊朝日  2021年9月10日号より抜粋

著者プロフィールを見る
池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

池田正史の記事一覧はこちら