「昔から国際交流がすごく好きだった」と言う狩野さんは、小学6年のときに「ジョンレノンに憧れて、そこからビートルズや英語が好きになった」(それがのちに運命的な出会いにつながる)。
大学時代は留学生のキャンパスアシスタントを務め、卒業旅行では一眼レフを手に、ロンドンを訪ねた。
「そこで撮った写真を相手に渡したら、すごくよろこんでくれた。それがうれしかったというか、写真のよろこびを感じた。これはいいな、と思いました。写真の可能性を感じましたね」
■写真を使って何ができるか
2017年、狩野さんは「写真を通じたロシア・日本の文化交流」事業で、日本写真協会が選抜した写真家の一人としてサハリンを訪れた。撮影した作品は現地と東京で展示された。
「サハリンから帰って、写真展を開いたとき、写真を使って何ができるかが、自分の中で理解できたというか、『ああ、これだ』と思った。それが今回の写真展案内の冒頭の文章なんです」
<私は新たな「場所」に行って、新たな人々と出会うことが大好きだ。その中で写真を撮るという自己表現は人々と出会い、話すきっかけを僕に与えてくれる。写真という芸術は、新たな人々と関係を構築するための手段だ>
ロシアの写真家との交流後、「アーティスト・イン・レジデンスを一回やってみたい」と思っていた狩野さんはインターネットで公募情報を調べた。すると、「欧州文化首都」に選ばれたいくつかの都市が見つかった。
自分が何をやりたいのか、どんな作家活動を行ってきたのかをリポートにまとめ、各国のレジデンス担当者に送った。
しばらくすると、ノビサドの芸術家・リリアナ、ドラガン夫妻から返事が返ってきた。
「国際交流事業の視察で日本に行くので、そのときに面接というか、会いましょう、という話になって、それでお会いしたら、奥さんがパフォーマンスアーティストが大好きだったんです。日本を代表するパフォーマンスアーティストって、オノヨーコなんです。ぼくはジョンレノンが好きなので、そこですごく意気投合して、『ぜひ、来てください』となった」