――先生自身は。
僕はその状況を見て、まず患者さんの状態を把握することが大切だと思い、瞳孔の状態とか、出血の状態、今後どういうことをすべきか、ということを頭の中で考えました。かなり出血が強いという印象があったので、ここでできることにはかなり限界があると感じました。救急車が早く到着することを願って、情況を見ていました。
――安倍元首相に声はかけましたか。
僕はしていないのですが、(周りにいた)市民の方が、「安倍さん頑張って!」と声かけをされていました。ですが、もちろん反応はされていませんでしたし、僕自身も脈と一緒に爪の部分を押さえる、痛覚の感覚があるかということもチェックさせていただきました。それでも手足がぴくりともしませんでしたので、意識状態も悪いなということもわかりました。
――痛覚のチェックとはどういったことをするのですか。
爪のところをぐっと押さえるんです。普通の方だと、拒否反応が出るのですが、その感覚がなくなっていますと、何も反応は出ません。
――その後AEDを使ったとお聞きしました。
心マッサージもされていましたが、AEDをやるということで、テープを貼る動作に入っていたのですが、やはり状況が状況で、(安倍元首相が)着ておられた服も濡れていて、テープがなかなかうまく付かなったんです。最初に持ってきておられたAEDではなく、うちの診療所のAEDを持ってきてもらうようにしました。もう一度付け直したら、うまくいきました。
――付け替える作業は先生がされたのでしょうか。
それも、そこにいるみなさんが手分けしてやっていただきました。
――AEDをつけて、その後解析をすると思いますが。
自動で解析をしたのですが、えー……。ちょうどそのときに、作動している間に「離れて」という自動音声が出たので、電気ショックが始まるのかなと思ったのですが……そのすぐ後に「AEDを適応ではありません」という自動音声が流れました。
やはり、これはかなり状態が悪いというか、心停止の状態だなということの確認にもなりましたので、すぐさまそれを置いて、再度心マッサージを始めました。