中岡内科クリニックの中岡伸悟院長(撮影/福井しほ)
中岡内科クリニックの中岡伸悟院長(撮影/福井しほ)
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「ひと目見た瞬間に、かなり厳しいなと思いました」
「医学的にはわかっていたとしても、感情的には何か奇跡が起こってくれ、という一心でその場にいました」

【写真】銃撃直後の現場

 言葉を絞りだすように語ったのは、安倍晋三元首相(67)が奈良市内での街頭演説中に銃殺された事件で、直後に現場に駆け付けた中岡内科クリニックの中岡伸悟院長(64)だ。事件が起きた日は、現場のすぐ近くにあるクリニックで診療にあたっていた。

 普段通り診療する中岡院長の耳に飛び込んできたのは、「安倍さんが撃たれた」という言葉。はっきりと状況がつかめないまま、現場に駆け付けた中岡院長が目にしたのは、顔面蒼白で意識のない状態の安倍元首相だった。救命活動にあたった中岡院長が取材に応じ、当時の状況を語った。

*  *  *

院長:貴重なお命を亡くされました安倍元総理、並びにご家族の方の気持ちを考えますと……。まず、冒頭にご家族および関係者の方々に心よりお悔やみを申し上げます。

――昨日、救護に駆け付けたとのことですが、どなたから呼ばれ、どのタイミングで駆けつけましたか。

診療をしていたのですが、外が騒がしいと思い、出てきますと、「安倍さんが撃たれた!」と叫んでいる方がいました。何が起こったかというのは、はっきりつかめない状況でした。こういう内科の仕事をしていますと、外に出て確かめに行くと、(叫んでいたのは)自分の知っている患者さんで、「これはただごとではない」と思い、まず現場に行くことにしました。

まず、僕が一人で先に向かいました。安倍元総理が道路上に倒れておられまして、顔色をお伺いしたところ、かなり顔面蒼白で意識もない状態でした。

僕が行った時点で、どこの看護師さんかはわかりませんが、先に来ておられた方が一生懸命、心マッサージ(心臓マッサージ)をされておられました。かなり手際よくされていましたし、訓練を受けておられる方という印象でした。

その心マッサージと看護処置をされている状況を見て、心肺停止の状態と考えられたので、僕は、まず脈や目の眼球結膜の状態などを確認しました。

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かなり出血している印象だった…