2021年3月1日から写真家・佐藤倫子さんの作品展「creative snap」が都内2箇所で開催される。その写真展から見ることができる現代スナップの「ひとつの答え」とは……。
何気ない日常に存在する空間。特段気にしていないと当たり前のように流れてしまう景色も、写真家・佐藤倫子さんの視線であれば、それはアートな世界へと変わっていく。写真家に重要なのは「視点」だ。少し目線を変えて、自分のイメージしている色や影、色模様を意識して撮ることで、日常が「非日常」に変わっていく。写真とは「真を写す」という言葉の通り、リアルなものを正確に記録に残すということが重要だとされている。しかし、作家の手にかかれば、それは記録ではなく「記憶」になる。その変革こそクリエイティブな作業なのだ。
広告制作に興味があった佐藤さんは資生堂宣伝部に入社。そこで数々の仕事をこなし、その後、フリーランスへ転身。写真家としての人生を歩むことになる。現在ではニッコールクラブの顧問にも就任しており、写真文化の担い手として活躍している。
「この時代に経験したことは、今につながっています。広告写真は掲載の期間が限られているものがほとんどです。また、載った写真を誰もがじっくり見るわけでもなく逆にサラッと見過ごしてしまう程度のことが多いでしょう。それでも制作者側は、全エネルギーを使い一つの広告を作り上げます。そこに広告写真の魅力を感じました。広告写真は、いかにクライアントやクリエイティブディレクター、アートディレクターの要望に応える画を表現できるか、だと思います」
そう話す佐藤さん。厳しい世界での経験をもとに、自分なりの写真の世界を描く。
佐藤さんの作品で注目したいのは、色彩のあり方だ。なんでもない無機質な中に、存在するパステルな色使いを上手に構図にいれている。その色使いは、観るものを明るい気持ちにしてくれる。そういう写真こそ、これからの時代に必要なのだと確信させてくれる写真だ。