写真のように終点嵐山駅構内がゆったりと広いのは、嵐山駅から明智光秀の連歌の会でお馴染みの愛宕神社への参詣客を運ぶ「愛宕山鉄道」が出ていたことに起因する。かつての愛宕山鉄道は、画面右端のホームを起点にして手前に折返すように発車し、大きく北側に左折して清滝駅に向かっていた。
嵐電と同じ京都電燈傘下の愛宕山鉄道は、1929年に嵐山~清滝3400mを開業。同時期に清滝駅から接続する愛宕山ケーブル2000mも開業した。1944年に「不要不急路線」に指定され、国策によって廃止された路線だ。戦後も復旧することなく、現在も途中の清滝トンネルを始めとする線路跡を残している。
こうして写真で振り返るだけでも、京都・洛西の美しさが随所にあらわれている。
■撮影:1975年11月22日
◯諸河 久(もろかわ・ひさし)
1947年生まれ。東京都出身。写真家。日本大学経済学部、東京写真専門学院(現・東京ビジュアルアーツ)卒業。鉄道雑誌のスタッフを経てフリーカメラマンに。著書に「都電の消えた街」(大正出版)、「モノクロームの軽便鉄道」(イカロス出版)など。2020年5月に「京阪電車の記録」をフォト・パブリッシングから上梓した。
諸河久
55年前「銀座」から名物都電が消える日 高度経済成長期に役目を終えた銀座線「有終の美」