東池袋大勝軒の「中華そば」(2018年筆者撮影)
東池袋大勝軒の「中華そば」(2018年筆者撮影)
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 緊急事態宣言が発令され、約2カ月。一部地域で宣言は解除されたものの、自粛ムードは続いている。

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 大打撃を受けているのが飲食店である。外出自粛要請により遠のいた客足は今も戻らず、売り上げが激減。外食チェーンのロイヤルホールディングスが「ロイヤルホスト」、「天丼てんや」など70店舗を閉店するというニュースもあった。

 苦境を脱しようとテイクアウトに切り替える店も増えているが、熱々のスープと麺が売りのラーメン店にとってのハードルは想像以上に高い。筆者はラーメン専門のライターとして、人気ラーメン店の店主にコロナの影響と現状、今後の展開について取材した。

■「自粛が明けても営業は厳しい」

 4月7日の緊急事態宣言発令以降、売り上げが約50%減となっているのは「東池袋大勝軒」(豊島区)だ。つけ麺の生みの親である故・山岸一雄さんが1961年に開業した同店は、2代目の飯野敏彦さんが暖簾を受け継ぎ営業している。連日行列ができる人気店だが、緊急事態宣言が発令されてからは、下記の対策を取っている。

・夜の営業時間を2時間短縮(11:00~20:00)
・席を半分にし、三密を避け、ソーシャルディスタンスを確保
・店内で待てるのは2人まで。外は2mごとにつけた印上に並んでもらい、ソーシャルディスタンスを確保
・食券機の横に消毒液を3つ用意し、入店時に手の消毒を促す

東池袋大勝軒 本店(2018年筆者撮影)
東池袋大勝軒 本店(2018年筆者撮影)

 特に来店客が減ったのは、緊急事態宣言が発令された直後だった。客はまばらで、飯野さんの言葉を借りれば「かつて経験したことのないぐらいの来店客数」だったという。

 売り上げの減少に伴ってテイクアウトを始める店も増えたが、東池袋大勝軒での実施はない。こだわりの自家製麺で作るラーメンも、テイクアウトとなると麺が伸びてしまい、人気店のラーメンとして出すのは厳しいという。これから夏が近づき気温が上がれば、食中毒の心配もある。今は持ち帰りでも味が落ちにくい餃子のテイクアウトを視野に入れながら、試行錯誤を続けている。

外出自粛要請中の池袋=2020年4月4日撮影(c)朝日新聞社
外出自粛要請中の池袋=2020年4月4日撮影(c)朝日新聞社

 一方で、売り上げが増えているのが通販だ。コロナ以前からお土産ラーメンとして「もりそば」や「中華そば」を販売していたが、緊急事態宣言後から注文が殺到。普段は店に通っている常連からも問い合わせがあったという。

 ゴールデンウイーク明けから会社員や工事の作業員などを中心に少しずつ客足が戻ってきている。長居はせず、食べたらすぐに店を出る客が多いのが特徴的だという。ファミリー層も訪れるようになったが、まだ厳しい状況が続くと飯野さんは言う。

「緊急事態宣言が解除されたとしても、席数をもとに戻して営業するのは難しいでしょう。席数を減らせば回転率も悪くなり、行列が長くなってしまうことも懸念されます。周りの状況を見ながら判断していくしかありません」

東池袋大勝軒「特製もりそば」(2018年筆者撮影)
東池袋大勝軒「特製もりそば」(2018年筆者撮影)

 ラーメン店は、限られたスペースの中でできるだけ席数を確保し、それを回転させて売り上げを作っていく業態。「三密」を避けるために席数を減らせば、回転率も落ちてしまうという悪循環は避けられそうにない。

「温泉地の名店」もコロナ対応を余儀なくされている。

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井手隊長

井手隊長

井手隊長(いでたいちょう)/全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター。Yahoo!ニュース、東洋経済オンライン、AERA dot.など年間100本以上の記事を執筆。その他、テレビ番組出演・監修、イベントMCなどで活躍中。ミュージシャンとしてはサザンオールスターズのトリビュートバンド「井手隊長バンド」などで活動中。本の要約サービス フライヤー 執行役員、「読者が選ぶビジネス書グランプリ」事務局長も務める。著書に『できる人だけが知っている 「ここだけの話」を聞く技術』

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