イラスト:オカヤイヅミ
イラスト:オカヤイヅミ
この記事の写真をすべて見る

※本記事のURLは「AERA dot.メルマガ」会員限定でお送りしております。SNSなどへの公開はお控えください。

 昨年の1月は新聞小説の締切があったため、のんびりできないので、久しぶりにおせち料理を購入した、という話は以前にも書いた。そして今年もスケジュールを確認したら、1日と2日しか休めないとわかり、少しでも楽に過ごそうと、またおせちを注文した。昨年は糖質制限おせちの糖分の少なさに満足したのだが、今年は2人程度の少人数向きのものをまずピックアップして、そのなかからオーガニックで添加物を極力抑えたという、おせちにしてみた。小さな二段のお重の一段目に、見慣れた伝統的なおせち料理が詰められ、二段目の隅には豚の角煮が三切れ、その他焼き魚などが入れられていて、多くの品が少しずつ詰められているのもよさそうだった。

 大晦日の夜に届けてくれ、1月1日に角、鶏肉、小松菜が入ったすまし汁の雑煮を作り、重箱のなかの煮染めをひと口食べたとたん、しまったと思った。自分が作るものとは味付けが違うとわかっていながら、想像以上に甘味と塩味が強い。素材はオーガニックかもしれないが、ふだん自分の好みで味付けをしている私にとっては、その強めの味がちょっと辛かった。

 食べているうちに、特に濃いもの、薄味のものがわかってくるので、それを交互に食べて口の中を中和したり、朝、昼は濃い味のものを食べ、夜は薄味のものと分けたりして、何とかほとんどを食べたが、二段目に詰められていた、牛肉の煮物と味噌和えは、あまりに味が濃くて残してしまった。私には肉類は厚さ2センチの豚の角煮が三切れあれば十分で、

「おせちにこんなに肉が必要なのだろうか」

 と問いたくなった。もしもこの肉の多さに気がついていたら、注文しなかったかもしれないが、私はカタログを見た時点で、気がつかなかった。他の、数の子、エビ、コハダ、昆布巻きに比べて何倍もの量があるということは、牛肉に関するいわれは何かという疑問はともかく、こういった食材がおせちとして、人気がある証拠だろう。

次のページ