私が御飯を炊いて自炊をしていると知ると、ひとり暮らしの女性たちに驚かれることが多かった。

「御飯ってなかなか食べられないんですよ」

 という。炊飯器やレンチン御飯にすれば楽だろうにと思い、

「毎日、どんなものを食べているの」

 とたずねると、朝食は前夜、会社からの帰り道にコンビニで買っておいた菓子パンとコーヒー。自分で、よくやったと思える満足な朝食は、フルーツ・グラノーラに牛乳、スムージーだそうである。昼は会社でサンドイッチや惣菜パンのような、近くのコンビニや店舗で購入できるもの。夜は同僚と一緒に食べる場合は、行きつけの居酒屋か、イタリアンだという。

 私はお酒が飲めないのでわからなかったのだが、最近の女性はお酒を飲む人が多いので、夜は御飯を食べずにお酒と料理という人もいるのではないか。イタリアンも基本はパスタなので、意識してリゾットを注文しない限り、米は口の中には入らない。家でワインを飲むとしたら御飯は合いそうにないし、日本酒、焼酎、ビールもそうだろう。そうなると御飯の出番はないのである。

 また、きちんと昼食の時間として1時間取るのは難しいという話も彼女たちから聞いた。

 私は食事の時間は絶対なので、どんなに仕事が詰まっていても、きっちりと1時間取る。そうしないと元気が出ないのだ。彼女たちは、ひどいときはずーっとパソコンの前で作業をし続け、夕方になって昼御飯を食べていないことに気付くという。会社のパソコンの前で仕事をしながら昼食を食べるとなると、両手がふさがると仕事の効率が悪くなるので、御飯とおかずの箸で食べる弁当ではなく、片手で食べられるものを選んでいるのだとわかった。

 そうなるととりあえずはお腹の中には入っていくけれど、食事を摂ったという感覚はほとんどないのではないか。何となくお腹がすいて、何となく歯ごたえがなく、よく噛まなくても済むものを口の中に入れて終わり。夜も液状のものを重点的に流し込んで、体力がつきそうな肉を食べておく。なかには、

「何人かで食事をするときはいいけれど、夜、部屋で1人で食事をするときに、御飯を食べると何となく悲しくなってくるので、パスタやパンにしちゃうんです。パンとレトルトのシチューよりも、自分で作った御飯と味噌汁のほうがわびしい感じ。何でですかね」

 といった女性もいた。御飯は実家や家庭など、家族を連想させるのだろうか。

暮らしとモノ班 for promotion
「更年期退職」が社会問題に。快適に過ごすためのフェムテックグッズ
次のページ