大銀行安全説は崩壊

「素人の投資は危険」というブレインロックも根強い。今回のアンケートでも3位に入った。

「個別株の値動きを予想することはプロでも難しい。リスクは実際、高いです。私はインデックス型の投資信託を毎月、定額で積み立てる方法を勧めています。投資は危険というブレインロックにかかると、初心者にもできる方法があるという情報を脳が受け付けなくなります」

 なお、「大銀行のおすすめなら安全」についてはほぼ崩壊、否定的な意見が多かった。

「大銀行なら安心なんて、勉強不足の情報弱者。こんな人、いるのか? 信じがたい」(埼玉県・会社員・40代)と辛口の意見も。「努力すれば成功できる」「真面目に働けば出世する」「がんばらないと稼げない」も軒並み下位に来ている。

「ずる賢さがないと出世にはつながらないと思う。昔の会社員のように年功序列の世の中ではないので」(個人情報の記入なし)という現実派が目立った。その脇で「真面目さで損をすることも多いが、損得では考えない生き方の人間がいてもいい」(愛媛県・職業記載なし・60代)など、成功は二の次という考え方も。そもそも出世に対する欲や人より多く働く姿勢が薄れているように見受けられた。

 ブレインロックは、いわば日本人を何十年もやってきた末に陥った「罠」だ。親や学校からしっかり教育され、企業の理想通り真面目に働き、メディアや書籍から最新情報を吸収──そういった、よりよく生きようと努力する賢い人ほどブレインロックにハマりやすい。

 ではロックを解除するにはどうすればいいのだろう。

「新しい情報に触れること。家族や職場とは違う世界にいる人と話すこと。情報のポイントは『質より量』です。たとえば親から刷り込まれた一つの考え方とは違う情報が二、四、六……と増えていくたびに刷り込みが薄れます。そして一定の量を超えた時に思考がひっくり返ります。その繰り返しです」

(エディトリアルライター・木村直子、編集部・中島晶子)

AERA 2022年7月4日号

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。「AERA」とアエラ増刊「AERA Money」の編集担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などの経済関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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