
私たちの思考や行動は、無意識のうちに親、企業、メディアから縛られている。何げない「思い込み」を解除するだけで、視界の外に追いやっていた情報や選択肢に気づき、人生は前に進む。AERA 2022年7月4日号より紹介する。
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「給料が安くても、やっぱり好きな仕事を選ぶほうが人生、幸せだと思う」
こう言われてNOと答える人は何人いるだろうか。本誌読者のアンケート回答を紹介する。
「稼げないけど、好きな仕事をしているので文句はない」(個人情報の記入なし)
「好きでないと仕事を続けられないと思います。給料とモチベーションの落としどころを見つけないと生活が破綻しますよね。だいたい給料なんて“がまん料”みたいなものでは?」(東京都・会社員・60代以上)
好きな仕事で十分な収入を得られるなら理想的だが、そうでない場合は、いわゆる“やりがい搾取”に陥ることもある。それでも「私は好きな仕事をがんばっている」という思いを拠り所に薄給かつ長時間労働を続ける人は少なくない。アンケートに答えてくれた人がそうとは言えないが、「好きだからOK」という思考が生まれるのはなぜか。勝間和代さんに聞いた。
「それは脳にプログラミングされた『ブレインロック』の影響です。日本語でいうと“社会的洗脳”でしょうか。幼少期には親や学校からのブレインロック。社会に出てからは企業またはメディア発のブレインロック。人間が無意識のうちに埋め込まれる価値観や、思想の刷り込みのことを指します。ブレインロックにかかると思考や行動に余計な制限が生まれがちです」
思い込みの自覚なし
怖いのは、本人は“偏った思い込みを持っている”という自覚がない点だという。
「無意識に合理性のない選択をすることで、お金や時間を失っているケースが多い。でも本人は脳にプログラミングされた通りに行動しているだけなので、なんの疑問も抱きません」
好きな仕事をしているが給与が低い人はどうすればいい?
「『自分が息を吸って吐くようにできてしまうことに対して、ほめてくれる職場へ転職すること』、これに尽きます。好きだが自分の得意分野が生かせない仕事では努力をしても評価されず、収入も上がらないでしょう。自分にとっても雇用者にとってもメリットがありません」
現代社会では、長時間労働をしても成果に結びつきにくい。
「今は資本とテクノロジーが企業の付加価値を生む時代。つまり労働者個人が毎日数時間余計に働いたところで、企業の利益にはほぼ影響がないのです」