今年の1月の終わりだったか2月のはじめ、雪が降っているとても寒い日だった。ふだんは牛丼店の前にいるのは、男性がほとんどなのに、その日は幼児を連れた母親が、5、6人並んでいてびっくりしたのを覚えている。その話を小学生の子供を持つ編集者にしたら、

「たしか携帯電話会社のサービスで、牛丼が無料になる日じゃなかったかと思います」

 と教えてくれた。そうか、無料になるからふだんは見かけない母親が並んでいるのかと思ったものの、大人はともかく雪が降る日に幼児を一緒に並ばせ、その結果、牛丼をその子に食べさせるのかと、すでに思考回路は姑と化している私は、他人事ながら大丈夫なのかと心配になってきた。車が大量に通る幹線道路のそばで雪が降る寒風のなか、幼児をずっと並ばせる神経は、姑根性になっている私としては、納得し難いものだった。

「いくら牛丼が無料になっても、風邪を引いて病院に行くはめになったら、どっちが得なのかまったくわからないわよね」

 呆れていたら、編集者もちょっと理解できないと驚いていた。

 昔は駅の周辺には必ず、定食屋があった。ファミレスもファストフードもそれほど多くなかった時代で、ひとり暮らしの大学生や独身男性は、そこで腹を満たしていた。私も若い頃に、2、3度、入ったことがあるが、一汁三菜のお盆が出てきて、いわゆる昭和の御飯だった。作っているお父さんやお母さんが年配なので、やや塩分が多めかなとは感じたが、自分が食べて育った料理が出てきて、肉や野菜のバランスがとれていた。私がOLだったときも、パスタなどの単品や、鳥の餌のような申し訳程度の生野菜で食事を済ませてしまうOLよりも、そのような食堂で食べている男性のほうが、必要な栄養が摂れているという話もあった。

暮らしとモノ班 for promotion
「プラレール」はなぜ人気なの?鉄道好きな子どもの定番おもちゃの魅力
次のページ