仕事中に彼女たちが、手を止めてこそこそ話をしているので、何をいっているのかと聞き耳をたてていると、

料理がおいしくて店員の感じが悪い店と、料理がまずくて店員の感じがいい店と、どっちがいいか」

 と真剣に話し合っていた。明日までにクライアントのライバル社の、雑誌別広告出稿リストを作らなくてはならないのに、いったい何をやっているのかと腹を立てつつ、私は、

(両方だめだよ)

 と心の中でいった。彼女たちが特別なわけではなく、評判になった店に行くことを楽しみにしている人は、現在のインターネットでの飲食店の評価サイトを見れば、当時から今に至るまでたくさんいるのは間違いないのだ。

 テレビをつければ、飲食店の紹介をしない日はない、和、洋、中、エスニック、スイーツなど、すべての飲食店のジャンルを網羅して新しい食べ物、店を紹介している。私はそんなものよりも、テレビ番組の「陸海空 地球征服するなんて」のナスDが、無人島で自ら海に飛び込んで魚を捕獲し、それをアルマイトの鍋に入れた海水と川の水、他の魚の骨を入れて作った出汁で煮ているのを見ているほうが、ずっと興奮してよだれが出そうになる。

「いったい、どんな味なんだろう。すごくおいしそうだけど」

 とわくわくして、想像をかきたてられる。お洒落な内装のレストランより、インスタ映えする盛りつけが派手な料理よりも興味がわく。しかしこういうタイプは今は少ないに違いない。

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