イラスト:オカヤイヅミ
イラスト:オカヤイヅミ
この記事の写真をすべて見る

※本記事のURLは「AERA dot.メルマガ」会員限定でお送りしております。SNSなどへの公開はお控えください。

 昔はバテるのは「夏バテ」しかなかったのだが、最近は「梅雨バテ」「冬バテ」もあるそうだ。考えてみれば人が1年中バテているような状態になってしまったようだ。おかげさまで私は、いけないと思いつつ甘い物を多めに食べて、これはまずいと反省することはあるが、自分が節制すれば問題ない状態で過ごしている。またどこで聞いたか忘れたが、朝起きて朝食の前に歯を磨くと、寝ている間に口内に入った雑菌を取り去るのでよいと知って、それを実行しているが、たしかにいい。以前からうがいはしていたが、それよりも効果がある。歯磨き粉はつけずにブラシだけで磨くのだが、体もすっきりするような気がしている。よい体調を維持するためには、日々の細かい対応が必要なのだ。

 私は1年中、食欲があるが、湿気に弱い体質なので、梅雨がいちばん苦手だった。体がだるくて重く感じ、1年のなかで最悪の期間だった。それが体内に滞っていた余分な水分を抜いてからは、とても楽になったし、食べる物にも気をつけるようになったのが、大きな要因だと思う。

 以前は梅雨どきには、ふだん食べないような煎の類が食べたくなったり、味付けも濃いめになっていたような気がする。漢方薬局に通うようになった当初、先生から、

「梅雨どきは何となく体も頭も、もやっとしたぼやけた感じになるので、刺激が強いものを口にしたくなるんですよ。塩分が多いものとか、炭酸がきついものとか」

 といわれ、私もそうだったと納得した。

 煎餅を食べると喉がかわくので、水分を摂る。そのときは水分は摂ったほうがいいと考えていたので、まったく疑っていなかった。しかしその水分量は私の体質には多いもので、それによってまた体内に水分が溜まり、体調が悪くなるという繰り返しになっていた。水分を抜いてからは、甘い物と同様、煎餅の類もあまり食べなくなったが、それでも梅雨どきにスーパーマーケットに行くと、つい煎餅の棚の前に立っている自分がいる。そしてどれにしようかと迷って、結局は買わない。手が伸びなくなったのが、自分なりの進歩だと思うのだけれど、やはり体の奥のほうで塩分が多いものを食べたい欲望が残っているのだろう。

次のページ