料理研究家のリュウジ氏(撮影/写真映像部・松永卓也)
料理研究家のリュウジ氏(撮影/写真映像部・松永卓也)
この記事の写真をすべて見る

 SNSの「バズ」がデビューのきっかけにもなった、料理研究家のリュウジ氏。その人気の裏側には、彼が勤めていた老人ホームでの積み重ねがあった。自身の料理哲学と仕事論を語りつくした最新刊『孤独の台所』(朝日新聞出版)より、一部を抜粋してお届けする。

【写真多数】リュウジさんの孤独な横顔

*  *  *

 2017年から俺は、この老人ホームで作っていた料理に名前をつけて、今のX、旧Twitterにアップしはじめました。

 そしてその年の3月28日、みんなが大好きな「大根のから揚げ」のレシピをアップしたらバズって、フォロワーが一気に増えました。

 バズったレシピは他にもあります。枝豆をチーズと和える洋風おつまみ「ペッパーチーズ枝豆」は、おじいちゃんおばあちゃんたちに大ウケでした。

 年を重ねると和風を好むかと思ったら、そうでもない。簡単だけど酒のつまみになるようなものも、みんな大好きなんですよね。このレシピもTwitterでバズって、またフォロワーが増えます。

 1章で紹介した「無限キャベツ」も出してみました。おじいちゃんおばあちゃんも野菜は食べたいけど、生で食べ続けるのはしんどい。それなら湯通しキャベツなら食べやすいかもな、と出してみたらやっぱりハマりました。

 千切りキャベツがいい感じにしんなりしているから、つまみ感覚で副菜として食べてもいい。これがTwitterでもバズる。

 しばらくの間、俺の代名詞みたいな料理になりましたが、実はおじいちゃんおばあちゃんたちに出していた料理だったんです。

 レシピがバズってから、テレビから仕事のオファーが来るようになりました。

 俺がテレビに出るようになって一番の応援団になってくれたのは、施設のおじいちゃんおばあちゃんです。「テレビ見たよ」「がんばってるね」と励ましてくれました。

 次から次へと仕事が来るようになり、もう料理研究家を名乗ってもいいんじゃないかと思うようになりました。名乗ってみたら仕事もさらに増え、収入も上がりました。

次のページ 精神的にきつかったのは…