最後に登場した鍵山は、軽快なジャズ『I wish』(ローリー・ニコル氏振付)に乗ってショートプログラムを滑った。振付師のニコル氏からは「小洒落た男性をイメージして」と言われたという。一蹴りが伸びるスケーティングと、上半身の小粋な所作が溶け合う華やかな演目だ。
2022年北京五輪では個人・団体の両方で銀メダルを獲得した鍵山は、世界王者イリア・マリニン(アメリカ)のライバルとなり得る数少ない存在だ。昨季もグランプリファイナル2位・世界選手権3位と結果を残した。ただ世界選手権では、ショートでマリニンと僅差の2位につけただけに、失速したフリーの演技は残念だった。鍵山自身、「先シーズンは自分に負けてばかりのシーズンだった」と振り返る。
「今シーズンは一日一日過ごすごとに自分の反省点や次につなげていくための課題をしっかりと出して、日々充実した生活を送れるように。それを積み重ねていけば、いずれ自分の目標に繋がっていくのかな」
「今シーズンの一番目指すべき場所は、オリンピックの金メダルです。団体も個人も金メダルを目指しているので、そのためにやはり、今から一日も無駄にすることなく努力していかなければならない」(鍵山)
ミラノ・コルティナを目指し、日本のスケーター達はそれぞれの道を歩んでいる。
(文・沢田聡子)
沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。フィギュアスケート、アーティスティックスイミング、アイスホッケー等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。2022年北京五輪を現地取材。Yahoo!ニュース エキスパート「競技場の片隅から」
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