樋口は、自らのスケート人生を表現するショート『My Way』(ジェフリー・バトル氏振付)をエモーショナルに滑った。

「この最後のシーズン、『締めくくりにちょうどいいプログラムになるな』と思って、この曲にしました」

「今シーズンで引退しようと決めて、臨んでいるので。目標はオリンピックにいくことですけれども、それ以外の試合でも一つ一つの試合が最後になると思うので、すごく気を引き締めて滑りたい」(樋口)

 世界ジュニア選手権では2015・16年と2年連続で銅メダルを獲得している樋口は、天才少女として注目されてきた。2018年平昌五輪が行われた2017-18シーズン、前半はグランプリファイナルに進出するなど好調だったものの、全日本選手権では怪我もあり4位。惜しくも平昌五輪代表から漏れた。

 しかし4年後の2022年北京五輪では悲願の代表入りを果たし、個人4位、団体2位と活躍。北京五輪の翌季は右すねの疲労骨折もあり一試合のみの出場だったが、2023-24シーズンに復帰。昨季はグランプリファイナルに進出、世界選手権でも6位に入る健闘をみせた。苦しさも喜びも人一倍味わってきた樋口にとり、今季は三度目の五輪シーズンとなる。

 親友の樋口より少し前に今季限りの引退を表明していた坂本は、スケート愛を表現するフリー『愛の賛歌』(マリー=フランス・デュブレイユ氏振付)を披露した。憧れの鈴木明子さんが現役最後のシーズンに滑った曲を、競技人生の幕引きに選んだという。歓声と拍手を浴びて演技を終えた坂本は、「こういう経験もどんどん少なくなってくると思うので、本当に一回一回をかみしめて」滑ったと吐露した。

 坂本は、2022年北京五輪で個人の銅メダル・団体の銀メダルを獲得。世界選手権では2022・23・24年大会を制し、3連覇を果たした。今年3月の世界選手権では惜しくも2位となり4連覇はならなかったものの、ミラノ五輪の優勝候補であることは間違いない。

 昨季は、それまで苦手意識のあったルッツをフリーで従来の1本から2本に増やすなどジャンプ構成を変えて挑んだが、「やって自分自身納得したところもあって、やっぱり元の構成の方が安定感もありますし」と元の構成に戻すことを明らかにした。ジャンプにつく高い加点が強みである坂本にとって、最も力を発揮できるプログラムで五輪シーズンに挑む。

「オリンピックに出られたら、団体・個人ともに銀メダル以上を狙って頑張りたい」(坂本)

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