度を超えたクレームに苦慮するケースは少なくない(写真はイメージ/gettyimages)
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 首都高速道路が利用客から電話でカスハラに該当する行為を受けた場合、理由を伝えたうえで電話を切ってもいいとした「切電(きりでん)マニュアル」を導入してから2年が経過した。年間約62万件もの電話が来る同センターだが、これまでに実際に「切電」したのはたったの34件。だが、会社に守られているという従業員の安心感や、思わぬ抑止効果も実感しているという。

【実際の写真】電話対応するオペレーターを守る「3つのルール

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年間62万件もの電話に対応

 都内某所にある首都高お客さまセンター。目的地までの所要時間や渋滞予測、サービスへの意見やクレームまで、年間約62万件もの問い合わせ電話を受ける、利用客対応の最前線だ。

 6月初旬、筆者がセンターを訪れると、利用客からかかってくる電話にスタッフが次々に対応していた。

 取材に応じてくれた首都高サステナビリティ推進企画課の恩田和典課長によると、筆者が訪れた時はこれでも「凪」の状態。

 緊急時には状況が様変わりするという。例えば、積雪が予想された時に「予防的通行止め」を実施した際には、「いつまで通行止めを続けるんだ!」などと、3日間で1万件を超す苦情を含む問い合わせ電話が殺到したこともあったという。

「カスハラ」からスタッフをどう守るか

 近年、カスハラ被害から労働者を守るため、自治体がカスハラ防止条例を設けたり、企業でも急ピッチで対策作りが進んでいる。威圧的な態度や暴言にさらされ続けた結果、心を病んだり離職するケースもあり、どう未然に防ぐかが喫緊の課題になっている。

 首都高は一足早い2023年の5月、お客さまセンターで、カスハラ行為に該当する電話を切っていい「切電マニュアル」を導入した。

切電マニュアルの実態は

 マニュアルといっても、A4の用紙たった2枚で、オペレーターや上長が判断しやすいように、ルールもわかりやすい。

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