打撃練習する中日・石川=日刊スポーツ
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 和製大砲は覚醒するのか。厳しい現実を突きつけられているのが、中日の石川昂弥だ。

【写真】慶大不合格から中日のエースになったのはこの選手

 今年就任した井上一樹監督は、実績では上の細川成也ではなく、石川を開幕から「4番」で起用し続けた。期待の大きさを物語っていたが、打撃の状態が上向かず、4月12日にファーム降格。5月31日に1軍昇格したが、アピールできない。21試合出場で打率.132、0本塁打、4打点。同じ三塁を守る高橋周平が6月11日の楽天戦で守備の際に相手走者と交錯、左肘関節を脱臼して戦線離脱したが、チームは15日に西武から三塁を守れる佐藤龍生を金銭トレードで獲得した。

 中日を取材するスポーツ紙記者は、「石川の打席内容を考えたら三塁のレギュラー争いで序列が下がってしまうのは致し方ないでしょう。甘い球に手が出ず、ボール球になる変化球にバットが空を切る。打席に立つ表情が不安そうで相手投手と戦う以前の問題に映ってしまう。福永裕基が左手関節で負傷離脱した緊急事態に伴って、石川が1軍に復帰しましたが、打撃の状態が以前から良くなったとは感じられません。ファームで徹底的に鍛えたほうがいいのでは」と指摘する。

「日本を代表する打者に」と期待されたスラッガー

 石川は高校時代、東邦高のエース兼中心打者として名を知らしめた。高校通算55本塁打を記録し、2019年春のセンバツでは全国制覇を果たした。19年のドラフトでは中日、オリックスソフトバンクの3球団が1位指名で競合し、中日に入団している。

 石川がスラッガーとして好素材であることは間違いない。井上監督だけでなく、松中信彦1軍打撃統括コーチ、森野将彦1軍打撃・作戦コーチもホームランアーティストとしての資質を高く評価している。立浪和義前監督の時に打撃コーチを務めた中村紀洋氏も「振れる力さえつけば、日本を代表する打者になれる可能性は十分にある」と熱心に指導していた。

 他球団のスカウトは「打者のスタイルで似ていると感じたのは井口資仁さん(元ロッテ監督)です。手元まで引き付けて、バットのヘッドを走らせるような打ち方でセンターから右方向に長打を飛ばす。力感がないスイングに見えるけど打球が伸びていく。教えてできる打ち方ではありません。ミートポイントが体に近く、ボールを長く見られるので、変化球を見極められる。実際に変化球をさばくのがうまい印象がありました」と話す。

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