
昨年より激増している三振数
だが、故障の多さがネックとなり、なかなか1軍に定着できない。23年に121試合出場で打率.243、13本塁打、45打点と自身初の2ケタ本塁打をクリアしたが、昨年は82試合出場で打率.272、4本塁打、25打点と本塁打の数が激減。プロ6年目の今年は打撃不振がさらに深刻になっている。データを見ると、昨年は275打席で34三振だったが、今年は71打席で早くも26三振。相手バッテリーが対策を施した面もあるだろうが、長打を求められる中で打撃を崩してしまったように見える。
前出の他球団のスカウトは懸念を口にする。
「打撃の方向性で迷いが生じているのかもしれません。ミートポイントが一定でなく、ボール球を追いかけるようなスイングが見られる。結果を出したいという焦りがあると思いますが、高校時代に見せていた良さが消えてしまっています」
中日を長年取材するライターは、「今の石川はかつての高橋周平と重なります」と語る。
「高橋周平も高校時代に世代を代表するスラッガーとして活躍しましたが、伸び悩んで1軍に定着できない時期が続き、広いバンテリンドームでアベレージヒッターに変化して活路を見出しました。ただ、再び長打力を追い求めて打撃が崩れてしまった。現役ドラフトでDeNAから移籍して才能を開花させた細川成也は和田一浩前打撃コーチとの出会いが野球人生の分岐点になったように、指導者との相性や巡りあわせも重要だと感じますね」
石川は6月22日に24歳を迎える。高卒6年目で期待の若手という立ち位置ではなくなっている。現状を打開しなければいけない状況で、打撃スタイルを変えるべきか。中日OBは「石川は長打にこだわってほしい」と強調した上で続ける。
「問題は長打を求めるか捨てるかではなく、技術的なアプローチだと思います。真面目な性格なので色々な指導者の意見を聞いて、打撃の軸を見失っているように感じる。強打者になる選手は『これだけは譲れない』という芯があります。自分の打撃の強みはどういう部分で、どんな打者になりたいのか。高校時代の石川の打撃を見た時の衝撃を考えると、プロではその能力の半分も出せていない。毎年期待の新人が入ってくる世界で、期待される期間は長くありません。厳しい言い方になりますが、現状のままではトレード要員になってしまう。高橋周平がケガで離脱したことはチームにとっては痛手ですが、結果を残せば三塁の定位置を奪い返すチャンスです」
石川は試練を乗り越え、殻を破れるだろうか。
(今川秀悟)
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