「財源がない」と言いながら防衛費は増額

 まず、消費税が社会保障の財源として使われるとしても、それ以外に財源を求めてはいけないということにはならない。社会保障は国家の責務の中でも最優先されるべきものだ。もし消費税で足りなければ、外から財源をもってくるべきである。その財源は、法人税でも所得税でも良いし、租税特別措置を含む大企業補助や防衛費などの他の歳出の削減でも良い。富裕層に対象を限定して社会保険料のアップや年金給付額の削減を行っても良い。

 そうした議論は一切紹介しないまま、消費税を削減するときだけは「財源がない」と批判し、防衛費を増額したり、大企業に補助金を出したりするときに財源論をスルーするのはいかにも不公平だ。

 逆に言えば、今挙げたような財源論を伴った減税案であれば、「責任ある減税案」として認めて良いはずだ。そうした議論をなぜ促進しないのか。

 そのことをあえて議論から消して、あたかも、あらゆる消費税減税論が無責任であるかのように世論誘導する新聞の論調に騙されてはいけない。

 4月22日配信の本コラム「『消費減税』をポピュリズムと決めつけるのは思考停止 立憲・江田憲司氏の『食料品税率ゼロ案』を真剣に議論すべきだ」で紹介したとおり、2021年の立憲の選挙公約には、「富裕層や超大企業への優遇税制の是正で所得再分配を強化」というタイトルで、法人税に累進税率を導入すること、所得税の最高税率を引き上げ、現在分離課税になっている金融所得について国際標準まで強化すること、社会保険料の月額上限を見直し富裕層に応分の負担を求めることなどが書かれている。

 これらの提案をより具体的な公約として掲げたらどうであろうか。例えば、大企業への法人税に累進税率を導入すれば、円安でボロ儲けしているトヨタなどの大企業への大増税になる。

 しかし、立憲の支持母体である連合に属するトヨタなどの大企業の労働組合が反対するので触れる勇気がないのだろう。だとすれば、確かに無責任な提案だと批判されても仕方ない。

 最近一時の勢いに翳りが出ているとも言われる国民民主党は、カナダの制度を参考にして、高所得者の年金のうち国庫負担分の全部または一部を返還させる措置について検討することを提案した。

 富裕層への給付の制限の一つの形であり、前述のような私の財源論と問題意識を共有するものである。

 また、共産党はかねて独自の財源案を提示している。

 全ての野党が、消費税を減税するための財源論とともに、貧富の格差是正を含む税制と社会保障の抜本改革をタブーなく議論して新たな提案をできれば、そのときこそ、責任ある政党の連立による政権交代を実現できると思うのだが、いかがだろうか。

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