
「財政が悪い」から減税はダメだという主張
これは超長期国債に限定されない。やがては長期金利の指標となる10年物国債も売れなくなるという連想が広がる。
国債を売ろうとしても売れないということは、ある意味で財政の破綻である。今は、全く売れないわけではないから破綻とは言えないかもしれないが、国債の金利が下がる(価格が上がる)という見通しはないので、このままだと本当に国債が売れなくなりそうだ。
そして、この懸念に拍車をかけたのが、石破首相だ。
日本の財政は、事実上の財政破綻に陥ったギリシャと比べ、「ギリシャよりも悪い」とわざわざ宣伝してしまった。国家のトップは、国家財政が悪くて国債が売れないときには、我が国の財政は心配ありませんとアピールすべきだが、全く逆だ。
この発言は独り歩きして、世界中でニュースになった。
石破首相は、消費税減税に反対して、「何もしない首相」などと批判されたことで、参議院選挙に響くと心配したのだろう。減税しないことの正当性を力説するあまり、日本の財政が悪いので減税はダメだという主張についつい熱が入り、思い切り日本財政の悪口を言ってしまったようだ。
石破首相まで日本の財政はギリシャより悪いと言えば、国民も驚いて本当に財政危機なのだと理解し、消費税減税なんてとんでもないねということになるかもしれない。そうなれば、減税反対派の勝利。財務省も祝杯をあげるということになるのだろう。
そして、もう一つ喜ぶグループがいる。それは新聞社だ。
消費税減税反対論が盛り上がる背景には、実は、新聞社による非常に狡猾な世論誘導の影響があることはご存じだろうか。
例えば、読売新聞の5月13日付社説には、「消費税を減税する場合、別の財源を新たに手当てしない限り、社会保障サービスを削ることは避けられないだろう」「参院選の受けだけを狙った減税論は無責任と言わざるを得ない。各党の見識が問われている」と野党の減税案に反対意見を表明している。
朝日新聞の4月27日付社説は減税案を出した立憲民主党の野田佳彦代表について、「財源確保は『指示した』とするにとどめ、具体策は示さなかった……あまりにも無責任だ」と、こちらも減税提案した立憲の野田代表をこき下ろした。
毎日新聞も4月27日付社説に「立憲公約に消費税減税 責任政党の自覚問われる」というタイトルをつけ、「財政規律を無視した政策論が幅をきかせ、将来に禍根を残すことは避けなければならない」などと、減税案反対を打ち出した。
日本経済新聞は5月10日付社説のタイトルを「参院選対策の消費減税公約は無責任だ」として立憲を名指しで批判した。