新聞各社が「消費減税」に反対のワケ
いずれも消費税の減税を明確に批判している。
新聞による消費税減税反対の世論誘導のやり方は非常に狡猾だ。
例えば、日経新聞の5月26日付朝刊の世論調査を報じる見出しは、「消費税率『維持を』55% 本社世論調査 年代上がるほど多く 食料品ゼロに反対48%、賛成45%」だった。消費税率の引き下げに反対の人が55%もいて、食料品のゼロ税率については、国民の半数近くが反対で、賛成を上回っていると多くの人は思うだろう。
しかし、その答えを導くために、日経新聞は、質問の答えに細工をした。
消費税率について、「社会保障の財源を確保するために税率を維持するべきだ」という答えと「赤字国債を発行してでも税率を下げるべきだ」という二つの答えだけを用意したのだ。それ以外の重要な選択肢として、富裕層や大企業への増税や大企業への補助金や税制優遇措置の廃止縮減、防衛費減額などによって財源を確保して消費税の減税を行うべきだという答えを用意しなかったのである。
消費税を減税したら社会保障費は削られるが、それでも良いですかと聞いているのと同じだ。そう聞かれれば、それは困るという答えが増えるのは当然だ。この質問は、国民が消費税減税に反対しているという答えを作るためのものだとしか考えられない。
政党の「見識を問う」前に自らの見識を問うべきだと言わなければならない。
それにしても、これほどまでに必死に減税反対論を展開するのはなぜだろうか。
実は、新聞社は、自分たちの利権を守るために、食料品の税率を下げるのには大反対の立場だ。なぜなら、新聞は、食料品と同様、8%の軽減税率の対象になっているからだ。
今回もし、食料品の税率ゼロが実施されるとき、さすがに新聞も0%にしろとは言えない。そうなると、食料品と新聞の税率の連動性がなくなり、将来の消費税増税の際に、食料品並みのゼロないし低税率をという要求ができなくなる。他の消費財と同じ税率に引き上げられることになるだろう。
そこで、食料品と新聞を切り離す事態を絶対に避けるために、食料品だけ税率を下げるのは絶対に反対なのだ。
また、財務省と新聞社の間には、新聞に軽減税率を適用する代わりに、消費税の増税には反対しないという密約があると言われる。
増税に反対しないという約束は、減税には反対すべきだという意味になる。もし、そうしないなら、新聞の軽減税率はなくすぞという脅しが財務省からなされているか、あるいは新聞社側が自ら財務省の意向を忖度して反対論を唱えているのだろう。
新聞社がだらしないと怒る人もいるだろうが、相手の弱みにつけ込んで世論誘導の手先に使うという財務省の汚さをより強く批判すべきかもしれない。「ザイム真理教」が蔓延る理由がよくわかる。
私は、財源論なき減税論は無責任だということを否定するつもりはない。むしろ、富裕層増税などについて積極的に議論すべきだと考える。しかし、財務省と新聞が誘導する財源なき減税論は、全くおかしいと考えている。