古賀茂明氏
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 消費税減税に強い逆風が吹いている。

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 減税批判は極めて多岐にわたるが、いくつか例を挙げてみよう。

 第1に、これから高齢化が進み、社会保障のコストは増える。その財源となる消費税を減税すべきでない。

 第2に、消費税を減税すると、消費額が多い富裕層ほど減税される額が大きくなる。

 第3に、消費税の減税は、法律改正が必要で、さらに末端の小売店などを含め、システムの改修、値札の付け替えなどの膨大な作業負担が生じる。準備のための猶予期間も必要で、現在の物価高対策としては、あまりに時間がかかりすぎる。

 第4に、物価高に対応して一時的に減税を行うと言っても、一度減税すると元に戻すことは困難で、物価高対策だったはずなのに、事実上の恒久措置になってしまう。

 第5に、選挙が近いから国民に迎合するために減税提案がされているだけだ。それに騙されてはいけない。

 第6に、日本の財政状況は非常に厳しい。このまま「ばらまき」ばかりの放漫財政を続ければ、いずれは立ち行かなくなり、財政破綻する。将来の国民の苦しみは、今とは比べものにならないほど厳しいものになる。

 第7に、第6とセットであるが、「ザイム真理教」と呼ばれる財務省信奉者の存在だ。これに対して、財務省は「悪」で、その財務省が常に引き上げを狙っている消費税だから、「悪」が考えている増税と反対のこと、つまり減税することが正しいという議論も一部で強い支持を得ている。

 一時は、世論調査で国民の過半が消費税減税を求める結果が出ていたが、最近は、以上のような反対論の流布で、調査によっては、賛成と反対が拮抗する状況になっている。

 さらに最近石破茂首相が力説する「金利のある世界」という話がここへきて、非常に説得力を持ってきた。

 少し前まで、日本はデフレ下からの脱却を目指して安倍政権以来、異次元の金融緩和を続けてきた。これにより、マイナス〜ゼロ金利状態が長く続き、国債を発行しても利息を払わなくて済んだ。政府はばらまきを続けて、国の借金はGDP比で200%を超えた。ところが、金融の正常化に入った現在は、政府の国債は従来より高い利回りで発行せざるを得ない。国の利払いは徐々に増え、いずれは財政が立ち行かなくなるかもしれない。

 ただし、日銀が非常に慎重に動いているために、その心配はない、と皆が思い込んでいた。しかし、最近驚くようなことが起きた。それは30年物や40年物の新発の超長期国債の利回りが急激に上昇し、各々5月21日に一時3.185%、22日に同3.675%と史上最高になったのだ。日銀が積極的に買わない上に、市場参加者が、これからもっと金利が上がるから今買うと損をすると考えたために、利回りが上がっても国債が売れず(価格は下がり)、それを見た市場参加者は様子見を決め込むからますます売れなくなるという悪循環になる。

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