どこに行くにも和服。キャンパスでも、首相官邸に呼ばれても、いつも和服だ(写真/鈴木愛子)
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 iU(情報経営イノベーション専門職大学)学長、中村伊知哉。和服にウクレレを持ち、iUの学長として中村伊知哉は学生に式辞を送る。2020年、イノベーションを起こす人材を育てるために、中村が構想メンバーの中心となってiUは開学した。日本のカルチャーの素晴らしさに誰よりも可能性を感じている。「好きにしよし」で、枠にはまらず日本をもっと面白くする。

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YouTubeを開き、「情報経営イノベーション専門職大学 チャンネル」で検索すると学校紹介の動画が冒頭に出てくる。シルクハットにちょび髭、羽織袴を身につけた人物が、ウクレレを手に10分以上にわたってラップで学校を、さらに未来のデジタル社会を歌い上げる。学長の中村伊知哉(なかむらいちや・64)だ。大学の開学は2020年。

「新規の大学でもあり、1期生は親の4分の3が子どもの進学に反対したそうです。それでも入ってきてくれた。入学式で、その思い切りぶりは本当にかっこいいぞ、と言いました。偏差値が高い子も低い子もいろんな学生がいますが、なんかやりたい、なんか見つけたい、なんかチャンスがここにあるはずだ、と思ってくれたんだと思います」

 大学の略称はiU(アイユー)。実はiUを大学名にしようとしたが、文部科学省に許可されなかった。それなら、と「日本で最も長い大学名にした」と語る中村が構想メンバーの中心となって生まれた大学だ。

特別な羽織を着用した卒業式。ただし、こちらも型破り。学長式辞はウクレレを手に、しかも、あっという間に終わってしまった。「喋る人はいますから、そういう人に喋ってもらったらいいんです」(写真/鈴木愛子)

「デジタル超学校とでも言いましょうか。情報通信をベースにしてイノベーションを起こす人材を、産学連携で育成する大学。文理融合の即戦力人材を作る。米国では大学発で次々にビジネスが出てくるのに、日本はそれがない。おかしいと思って呼びかけたら、賛同者が集まってくれた」

 自分が高校生だったら絶対に入りたいと思う学校にしたかったと中村。デジタルと英語のカリキュラムの充実が大きな特色だが、ユニークなのが4年の間に全員が起業を経験すること。専任教員に加え、学生より多い1千人以上にのぼる起業家などの客員教員がサポートする。大学独自の投資ファンドも設立した。だが、中村が驚いたのは、4年次に想定していた起業を学生たちは1年次から立ち上げていったことだ。4年で学生起業は48社を数えた。日本で起業率1位の大学になった。企業へのインターンシップ派遣、商品開発などの共同プロジェクトも進む。外資系企業などでキャリアを積み、グローバルコミュニケーションの教員として初めて教育界に転じた学部長で教授の阿部川久広(65)は語る。

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