「厳しさ」が必要という判断で招聘されたのが鳥越氏。現役引退の翌2007年からはソフトバンクで11年、井口資仁監督(当時)の要請で2018年にロッテへ移り5年、コーチや二軍監督を務めた。選手を鍛え上げるプロとして各球団で実績を残してきた。
「厳しいイメージが先行しているが、状況判断力に優れた人。選手が考えていることを読み取る能力が高く、アメとムチの使い分けが絶妙。情に熱いことでも知られ、時にぶつかりながらも慕う選手は多い」(ソフトバンク関係者)
「パワハラに敏感な時代なので、(西武では)今まで以上に選手との接し方を考えているはず」(ソフトバンク関係者)とも付け加える。練習中から近くにいる選手に必ず一声をかけ、笑顔にさせる風景が日常的だ。
「言葉やタイミングなど、すごく気を遣っています」と鳥越ヘッド本人も認める。その上で、「必要なことは言いますよ」と語るなど、優しいだけの指導者ではない。
「就任以来、選手たちに必要なことをしっかり伝えてやらせている。まだまだ足りない部分もあるが、少しずつ形になりつつある」(西武OB)と評価は高い。逆に言えば、“VISION2025”を掲げたロッテにこそ欠かせない人物だったはずだが……。
「鳥越ヘッドはロッテに残る気持ちがあったと言われる。指導途中の選手を投げ出すことになってしまうことも気にしていた。しかし井口監督は円満退団ではなかったらしく、コーチやスタッフの一部も同時に退団となったようだ」(ロッテ関係者)
監督交代となれば首脳陣やスタッフが一新することはよくあること。しかし、ロッテは本当に必要な指導者を手放してしまったように思えるのは気のせいか。
「西武の課題が野手陣の底上げにあるのは明白。鳥越ヘッド就任は適材適所の素晴らしい補強になった」(西武OB)
西武が球界屈指の強力投手陣を誇ることは知られている。今季もオープン戦ながら4試合連続完封勝利を記録した。あとは昨季チーム打率.212(12球団ワースト)だった攻撃陣の奮起。そして、守備力を高めて失点を減らすことがチーム成績に直結するはずだ。
「野手に関しては他チームのコーチをして見ていた時と比べて子どもっぽいと言うか、意思統一もできていないし、決まり事もあやふやだと思いました」(鳥越ヘッド/3月23日「まるスポ」)
就任時には遠回しながら苦言を呈した野手陣が、少しずつ成長し始めている。「91敗した悔しさを忘れないよう」との理由から背番号91を着用した鬼軍曹の存在が、チーム内の歯車を動かし始めている。
ここから先は更なる成長と経験が必要になるため、壁にぶつけることも出てくるだろう。しかし、チーム全体が今の姿勢を維持し続ければ、結果が出る日も遠くないはず。西武の今季の戦いぶりは、「まぐれ」や「勢い」だけではなそうだ。
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