首都圏のトップ進学校である開成中学・高校。東大だけではなく海外進学する生徒が増えている

圧倒的に人気があるのはスタンフォード大

「私の場合は大学院でしたが、そもそもなぜ留学したのかと問われれば、世界の様々な国や地域の人たちとの出会いのチャンスを生かしたいと思ったからです。思いきってそういう場に身を投じたからこそ、その後の人生の糧になるような人たちと深く知り合うことができました。筆記試験の成績だけを磨きたい人には向いていないと思います」

 では今どきの若者には、どんな海外大学が選ばれているのか。学生に圧倒的な人気を誇るのが、コンピューターサイエンスやデータサイエンスに強いスタンフォード大だという。

「今はどの専門領域も、AIやビッグデータと掛け合わせることで技術革新につながる可能性が高いことに加え、シリコンバレーのスタートアップと結びつきの強い教授陣が多いのが人気の要因です」(同)

 米国のトップ大学の学生の男女比はほぼ半々。東進の海外大学志望者も男女比の偏りは感じられない、と渋川さんは言う。これは、合格者の女子比率が「2割の壁」を越えられない東大と対照的だ。とはいえ、渋川さんは近年の東大の取り組みに注目しているという。

東大がグローバルの扉を開ける

 その代表例が、27年に開設予定の新課程「カレッジ・オブ・デザイン」だ。授業はすべて英語。学部と大学院修士課程にまたがり、海外から約半数の学生を受け入れ、1年次は全員が都内の学生寮に入る。学部長は東大として初の外国人が就く。欧米で主流の秋入学を採用し、入試は従来の筆記試験と異なり、書類と面接で選抜する。渋川さんはこう評価する。

「これは海外のトップ大学に行かなくても、東大がグローバルな教育水準を提供できる場になるということ。東大を頂点とする国内大学のヒエラルキーに閉じることなく、東大がグローバルの扉を開ける意義は大きい」

 東進でも従来とは異なり、受験科目にはないワークショップやディスカッションなどを通じ、多様性を重視した教育の導入を進めているという。渋川さんはこう強調した。

「東大合格が人生のピークになってしまうのは、本人にとっても社会にとっても不幸です。東大に合格する優秀な人たちには『ノブレス・オブリージュ』(高い地位にある者の社会的責任)があり、個人としての幸せの追求だけでなく、社会の中で課題解決に取り組む責務があることを、とりわけ強く身に刻んでほしいと考えています」

(AERA編集部・渡辺 豪)

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