
開成高校から海外トップ大へ
東大合格者数のトップ校として知られる開成高校は18年に6人、19年に5人、20年には11人と、近年は海外トップ大学に進学する生徒が多い高校としての評価も定着している。
渋川さんはこの背景について「ハーバード大教授を務めた柳沢幸雄さんが校長に就任した11~20年ごろを境に、グローバルで活躍できる人材を育てる機運の盛り上がりとともに、海外大学進学を後押しする流れが定着した」と指摘する。
柳沢さんは18年の東大新聞のインタビューに、「優秀な学生が海外に進学するようになったのは、日本の未来に対する不安感や、企業の採用方法・採用基準の変化が理由なのではないか」と指摘。その上で「生徒は海外に行った先輩を見て『あ、あの先輩が海外に行っちゃった。あの人でも行けるなら俺も行ける』と思うんです。そうなると海外への進学という選択が雲の上の夢物語ではなく、現実になっていく」と話している。
エッセイと小論文は違う
米国の大学に入学するには、英語力はもちろん、共通試験であるSAT(大学進学適性試験、日本の大学入学共通テストに相当)にパスする必要があるが、「東大や京大に合格する学力レベルがあれば、学科試験に向けた特別な勉強をする必要はない」(渋川さん)。むしろ留意すべきは、個人の行動特性にかかわる素地だという。なぜなら、合否を決するポイントはエッセイの評価だからだ。

「日本の大学入試の小論文とは根本的に違います。起承転結を踏まえて理路整然と書けばよいわけではなく、強いて言えば、ラブレターに近いイメージです」(渋川さん)
エッセイの素材は学びの意欲のベースとなる夢や志にとどまらない、行動実績が必須だという。興味の対象に向かってどれだけがむしゃらに頑張り、リーダーシップを発揮し、困難や苦難を乗り越え、粘り強く努力して成功を勝ち取ったか。問われるのは18年間の人生で培った経験の中身だ。実際、エッセイで高い評価を得るのは「尖ったタイプ」の受験生で、合格率も高いという。
重視されるのは、大学卒業後に社会で活躍しそうな潜在力や、それにつながる再現性のある能力と熱意を備えているかどうかだ。
「そういう行動実績を重ねてきた人であれば、若干のテクニカルなアドバイスを踏まえ、エッセイでしっかりアピールすれば海外大学に合格できます」(同)