
会社の雰囲気や働く人の性別や年齢によって飛び交う会話は様々だが、特に地方の職場では、アットホームな環境ゆえにセクハラ発言や行動が見過ごされる傾向にあるようだ。AERA 2025年5月19日号より。
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髪を切った翌朝、男性上司は言った。
「失恋したの?」
九州で働く女性(23)は「また言います?」と笑ってはね返した。だが心中は笑っていない。女性は言う。
「よくも悪くも、距離感が近いからだと思うんです」
路上で自転車がパンクした人がいたら、見ず知らずの人でも助ける。すれ違えば、誰とでも笑顔で挨拶を交わす。女性が暮らす街では、どれも当たり前の光景だ。人の良さは誇りだと女性は思っているという。
職場でも、仕事の手を動かしながら「休みの日どこに行ったの?」という会話で盛り上がることがある。堅苦しい上下関係がなくて、気軽に意見を言い合えるアットホームな職場環境だ。
「でも、仕事と関係のない話をする延長で、セクハラ発言をするのも許されていると感じるんです」(女性)
地方から聞こえてくる声について、日本ハラスメント協会代表理事の村嵜要さんは、こう指摘する。
「人が温かく、距離感が近いことは、地方の良さでしょう。ただ、それがセクハラに繋がりやすいのも事実。地方の職場は、公私混同の要素が非常に強い。職場でもプライベートなノリが入っていることがうかがえます」
同協会に寄せられた地方からの最近の相談事例を見てみよう。まるで友達同士、恋人同士での出来事に思える事例が、各地で起きている。
「同僚から『痩せろ』『妊娠してから言え』と言われた」(岐阜)
「日常的に『誰と誰がやった』『俺はコイツとやった』といった会話が横行している」(福島)
「突然“膝カックン”され、腰をマッサージされた」(沖縄)
「伝言用の付箋メモに『今日もかわいいね』と書かれた」(香川)
「朝礼中に、大勢の前でいきなりおなかをぽんぽんと触られた」(新潟)