AERA 2025年5月19日号より
AERA 2025年5月19日号より

悩みをかなり溜め込む

「地方からの相談は、何年も前から悩んでいる人、1回の相談あたりの事例数が多い人が目立ちます。悩みをかなり溜め込んでいたのではないかと思います。さらに、セクハラの加害者が温かいコミュニケーションを取る人だったら、被害者は『セクハラをするけど、本当は悪い人ではない』と思ってしまい、被害を主張しづらくなっている傾向があります」(村嵜さん)

 一方、プライベートなやり取りこそ大切にしている職場もある。

「容姿を指摘しないなんて、あり得ない」と話すのは、大阪府の会社員女性(33)だ。

「髪切った? めっちゃいいやん、似合ってる」「ネイルかわいいやん」

 容姿をポジティブに指摘する一言が、「気にかけているよ」というメッセージになり、社員のモチベーションアップにもつながるという。部下が上司に気さくに話しかけやすい雰囲気が生まれるともいう。

「容姿について言えないなんて、仲間に無関心すぎじゃないですか」(女性)

 確かに職場におけるコミュニケーションの大切な要素のひとつに“相手に関心を持つ”ことはあるだろう。大阪府出身で、今も大阪で活動している村嵜さんは言う。

「東京や他の地域と比べて、大阪は容姿への指摘を不快に思わない人が多いのかもしれません。多少のセクハラが交じっても、活発なコミュニケーションが取れる相手のほうが仕事をしやすいと思う人もいます。大阪だから許される風土があるかもしれません」

 ただ、さまざまな価値観の人がいるのが職場であり、それは大阪であっても同じだ。

「第三者が聞いて不快な思いをする可能性があることを忘れないでほしいです。『容姿のことも言えないなんて』という気持ちはわかりますが、自分の言い分だけでは通りません。モチベーションアップの声かけは、容姿以外の話でもできるはずです」

(編集部・井上有紀子)

AERA 2025年5月19日号より抜粋

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