試合のための遠征費用もばかにならない(写真はイメージ/撮影・写真映像部・和仁貢介)

生活苦を察して都立に進んだ長男

 子供をサポートする親たちも複雑な思いを抱える。神奈川県内に住む40代の女性は夫と共働きで2人の子供を育てている。数年前に小、中学と野球に打ち込んでいる長男が甲子園常連の私立高校に行くことを希望したが、叶えられなかった。

「硬式野球部入部した場合は寮に入ることを義務付けられ、対外試合で北海道や東北にも頻繁に遠征に行く高校でした。諸々の経費を含めて学費以外に3年間で300万円以上掛かる。立派なグラウンドで施設も充実していたので行かせてあげたかったですが、生活を考えると苦しい。長男は事情を察して都立の高校で野球を続けましたが、今でも申し訳ない気持ちが消えません」

 現役時代にパ・リーグでプレーしていたプロ野球OBは「野球はお金がかかるんですよね」と漏らす。

「うちは母子家庭で、母親が3人の子供を育ててくれました。長男の僕が野球を続けていたので家計に大きな負担になったと思います。中学3年の時、母親に『高校に行かずに働く』と伝えたら、『生活のことは気にしなくていい。野球を続けなさい』って言ってくれた。授業料が全額免除になる特待生制度の高校に行きましたが、気になるじゃないですか。野球部は毎週のように県外遠征があって、夏休みは長期合宿もあった。交通費、宿泊代などを含めてお金が相当かかっていたと思います。感謝の思いしかありません。高卒でドラフト指名を受けてプロの世界に入れたので、契約金は全額親に渡しました。僕は幸い野球を続けられましたが、続けたくても続けられない子供がいる。国や自治体が補助するなど、サポートする仕組みがあってほしいと感じますね」

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