
「部活動指導員」をご存じだろうか。部活動を担当する非常勤職員のことで、教員の働き方改革の一環として、国が配置を推進している。専門的な指導力や顧問の負担軽減が期待されているが、果たして顧問と同等の仕事をこなせるのか。運用の課題はまだまだ多そうだ。
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生徒の成長を間近で見られる喜び
ツヨシさん(仮名、60代)は中学校教員のOBで、部活動指導員に任用されたのは5年ほど前。
「部員への技術指導だけでなく、大会運営の裏方の仕事を引き受けることもあります。それこそ昼ご飯も食べられず、1日中動くのですけど、負担感はありません。むしろ、生徒の成長を間近で見られることに喜びを感じる」(ツヨシさん)
部活動指導員は年に一度、教育委員会が主催する研修会への参加が求められる。
もしも、部活動中に事故が発生した場合、子どもたちを守るためにどう行動すべきか。研修会場には、100人ほどが集まっていた。ツヨシさんはスクリーンを見上げ、目を疑った。
子どもの命より「保護者への連絡」?
国は部活動指導員に応急手当、救急車の要請、医療機関への搬送、保護者への連絡を求めているが、フローチャートのトップに「応急手当」「救急車の要請」ではなく、「保護者への連絡」とあったからだ。
こんなことで、もしものときに子どもたちの命を守ることができるのか。たまらず挙手した。
「優先すべきは目の前に倒れている生徒を救うことで、まず大切なのは『保護者への連絡』ではなく、『応急手当』『救急車の要請』でしょう」(同)
2024年、首都圏で開催された部活動指導員向けの研修会での一コマだ。部活動指導員とは、部員に技術的な指導を行うほか、学校外の活動で引率を行う。顧問も務められる。制度が始まったのは17年。国は部活動改革を推進すべく、25年度は18億円を投じ、部活動指導員約1万6500人の配置を見込む。
部活動指導員は自治体の非常勤職員なので、自治体によって細かな任用ルールが異なる。ツヨシさんの場合、「仕事の内容は技術指導と引率が主で、部活内でのいじめの問題など生徒指導に関わるようなことは顧問に任せています」(同)。