部活動指導員の立場が宙ぶらりん
ツヨシさんは、部活動指導員の地位が宙ぶらりんだと感じている。
「教員でないので、保護者の個人情報を持ち得ない立場です。現状では保護者に連絡する手段すら整備されていない」(同)
ツヨシさんは研修会でのやりとりを記者に話した後、こう続けた。
「私は教員経験者なので、部活動を指導員に任せた場合に起こりうるさまざまな問題が想定できます。たとえば、校門の電子ロックの暗証番号を知らないままだと、休日に練習する場合は教員に学校に来てもらう必要があるとか。ところが教委は理念を説明するばかりで、現実に即した対応をしようとしない。そのギャップから生じるだろう問題は、部活動指導員に丸投げされているように感じました」
本音の「話し合い」が不十分
部活動問題に詳しい早稲田大学スポーツ科学学術院の中澤篤史教授は、こう語る。
「部活動指導員になる人の多くは、教員経験があったり、部活動に知見や思い入れがあります。そのため、学校現場での評判はとてもいい。彼らの力をどう生かして、部活動を運営していくのか。校長や部活顧問、顧問でない教員も含めて、意見のすり合わせが求められているのですが、その話し合いが、現状では全く不十分だと感じています」
文科省の学習指導要領において部活動は「生徒の自主的、自発的な参加により行われるもの」と定められている。
「教員は、部活動の顧問として常時立ち会う義務はない、という最高裁の判決があります。とはいえ、けがを負うことが想定されるような活動の場合は、教員が立ち会わなければならない」(中澤教授)
部活動の運営方針は各学校によって異なる。法律に沿うのはもちろんのこと、現場の実情に合わせた部活動のあり方を模索してほしいという。
「部活動指導員にどう入ってもらうかも含めて、職員会議でもっと議論すべきだと思います。部活動に打ち込む子どもや保護者の期待に応えるためにも、さまざまな立場の先生が本音で話し合うことが求められています」(同)